「薬剤師になるために薬学部に行く」という人は多いけれど……医学部・歯学部と並んで『医歯薬系』とよばれ、難関学部とされる薬学部。受験生の多くは薬剤師になるために薬学部を目指します。医師になるには医学部、歯科医師になるためには歯学部に進まなければならないのと同様、薬剤師の資格を得るためには薬学部で専門課程を修了しなければなりません。医療機関だけでなく薬局やドラッグストアなど活躍の場が広く、しかも医学部や歯学部に比べ難易度が低く目指しやすい薬学部は、毎年多くの薬剤師志望の学生が受験します。  薬学部のもう一つのコース『創薬系』大学によっては、薬学部に薬剤師養成学科とは異なるもう一つの『創薬系』学科を設けているところもあります。大学により『創薬科学科』『薬科学科』などと名称は異なりますが、これらの『創薬系』学科では薬剤師国家試験に合格するための勉強ではなく、将来新薬の開発を行う研究者になるための勉強をすることができます。医療の発展には、効果が高い、がんなどの難病に効く、副作用が少ない、といった優れた特長を持つ新薬の開発が欠かせません。『創薬系』学科は、日本の医療の未来を背負う若き研究者を社会に送り出す役割を担っているのです。  薬学部2つのコース、大学による違い薬学部のこれら2つのコースは、学ぶ内容以外にも大きな違いがあります。最も大きい違いは年数。薬剤師養成学科は2006年から制度改正により6年制となっていますが、『創薬系』学科は4年制のまま。卒業後は就職するか、大学院に進むことになります。ただここで問題になるのは、新薬を開発する研究機関の数が少なく、そこに就職するにはどうしても難関大学や大学院の出身者が有利となってしまうことです。そのため、『創薬系』学科は国立大や難関私立大に多いという傾向があり、大学受験での偏差値が高くなるほど薬学部定員に占める『創薬系』学科の割合が大きくなります。ちなみに日本最難関である東京大学では、薬学部生のほとんどは大学院へ進み研究者となるため、薬剤師になる人はかなり少数派のようです。逆に、私立大学薬学部は6年制の薬剤師養成学科だけというところも多いです。各大学とも薬剤師国家試験合格に照準を絞ったカリキュラムを構築し、国家試験合格率をより高くしようと努力しています。学部一体となって国家試験合格をサポートする手厚いバックアップ体制は、学生にとって心強い支えとなります。薬剤師になりたいのか、新薬開発に携わりたいのか、自分の目指す方向性によって大学を選ぶのがよいでしょう。