法学部→司法試験は少数派法学部といえば、文系学部の中でも難易度の高い学部のひとつ。『法』という名称からくるイメージで、司法試験を受けて弁護士・検察官・裁判官、いわゆる『法曹』を目指す人が多いという印象を持たれがちです。しかし、法学部に進んでも司法試験を受験する人は少数派で、むしろ民間企業や公務員に就職する人の割合のほうが多いのです。たとえば、2012年度司法試験の最終合格者を最も多く出したのは中央大学の法科大学院ですが、その中央大学でも学部卒業後法科大学院に進んで司法試験を目指すのは卒業生の2割に満たず、約3分の2が民間企業や公務員へ就職しています。  期待はずれの法科大学院このような状況になっている理由はいろいろと考えられますが、大きな理由のひとつとしては長引く不況の影響、そして法科大学院への失望感があると言われます。バブル崩壊以降、手堅い就職先を見つけようという学生の堅実志向がみられ、就職せず司法試験などの資格試験を受験し資格の取得を目指そうという学生が少ない状態が続いています。また、2004年に導入された法科大学院の制度とそれにともなう新司法試験にも大きな問題があると言われています。新司法試験は法科大学院で2年もしくは3年学んだ学生でなければ受験できませんが、それまでの旧司法試験と異なり3回しか受けられません。それにも関わらず、当初法科大学院卒業者の7~8割が合格することが目標とされていた新司法試験は、全国に設立された法科大学院の数が当初の予定を大幅に上回ったこともあり、合格率が5割程度。このため、法科大学院や資格試験予備校の高い学費を払ったものの、3回受験しても合格できず夢を絶たれる人が数多く出ているのが現状です。こうした状況が広く知られ、リスクが高い司法試験挑戦をあきらめる人が多くなっているようです。  就職に強い法学部しかし、法学部で学ぶ内容は、司法試験受験だけではなく、もちろん民間企業や官庁・公的機関で働くときにも役立ちます。日本の社会は法律というルールにのっとって動いています。近年は『コンプライアンス』(法令遵守)の重要性がますます高まり、企業は法律に明るい人材を必要としています。その中で法学部出身者は、企業の法務部門や、さまざまな法律をもとに仕事をする不動産などの業界で活躍できます。それだけでなく、法律を学ぶことで身につく『リーガルマインド』(法律を運用する際に必要となる思考力・判断力・法的感覚など)は、社会に出て仕事をする際、どんなことにでも応用がきく能力となります。よく「法学部はつぶしがきく」と言われ、就職先が多いイメージがあるのは、このような点からといえます。  社会で活躍できる法律系資格そして、法学部で得られる知識は、司法試験以外の様々な資格試験にも役立ちます。こうした各種資格取得ができるのも法学部へ進むメリットと言えます。司法試験と並ぶ難関資格である公認会計士や、司法書士・行政書士・税理士・社会保険労務士といった『士業』資格は独立開業も可能な価値の高い資格ですが、合格には各種法律の知識が不可欠。法学部出身者でなければ合格できないということはないものの、やはり法学部出身者は有利となります。大学在学中に合格できる資格もあるので、学生の間に資格を取り、難関資格保有者として専門性の高い職に就くことも可能。その後経験を積んで独立開業も夢ではありません。「いつかは独立したいな」と思う人は、法学部に進んで資格を取るのもひとつの手かもしれませんよ!