ダム、見たことありますか?ダムを見たことがありますか? ダムは川の上流につくられ、大量の水をたくわえています。現在日本にあるダムの数は、すでに建設されたものと建設中のものを合わせると3000以上。現在日本最大の多目的ダムは岐阜県の徳山ダムで、その貯水量はおよそ6億6000万立方メートル、実に東京ドーム532個分です。しかし、どうしてそんな大量の水をたくわえる必要があるのでしょうか。  ダムのおもな役割ダムは、水をためることで『治水』『発電』『利水』といった役割を果たします。まず『治水』とは、大雨の時にダムで水をせき止め、下流に大量の水が流れないようにして洪水を防ぐことです。ただ、ダムにも水を貯められる限界があるので、上流から流れ込む水が多いときには、流れ込む水より少ない量の水を少しずつ放流して貯水量を調整します。次に『発電』です。ダムの高さは、高いもので180m以上にもなります。この高さを利用して行うのが水力発電です。高いところにある物体は、位置エネルギーとよばれるエネルギーを持っています。ダムの上から水を落とすと、この位置エネルギーが発電用の水車を回す運動エネルギーへと移り変わり、発電が行われるのです。水力発電には、発電の源となる水が無限に存在し、また発電の際に二酸化炭素を出さないという特長があります。そして『利水』は、その名の通り川の水を水道用水・工業用水・農業用水などのために利用することです。こうした水は下流の堰(せき)から取水される場合もありますが、ダムから直接取水している場合もあります。必要な量の水を送れるように、ダムでは放水量を調節しています。  ダムの問題点このように私たちの生活に役立っているダムですが、一方で大きな問題点も抱えています。まず、建設に長い年月と多額の費用が必要となります。建設用地を調査してから完成するまで、小規模なダムでも10年程度、大きなダムだと数十年かかることも珍しくありません。当然、建設期間が長くなれば建設費もかさみます。規模にもよりますが、一般にダムの建設費は数百億~数千億円ともいわれます。そのため、どうしても「これだけのお金を投入してまでつくる必要はあるの?」という疑問を持たれてしまうのです。もう一つ、ダム建設の大きな問題点として挙げられるのが、建設地周辺の人や生き物の生活が破壊されてしまうことです。ダム予定地に住んでいる人は、村ごと引っ越さなくてはいけません。先祖代々の土地も、ダムができてしまうと水の底に沈んでしまいます。住み慣れた村がなくなってしまうのは、非常につらいことです。また、ダム予定地やその周辺にはしばしば貴重な動植物の生息地がありますが、ダム建設によってそうした生息地が奪われることも問題となっています。このように、ダム建設は多くの問題を引き起こすため、開発は慎重に行われなくてはいけません。  環境を考えた開発が必要社会の入試問題でよく見かける『環境アセスメント』という制度があります。これは、ダムなどの開発が環境に与える影響を事前に調べ、環境破壊の程度が大きいと認められる場合には中止を含めた計画案の練り直しを行い、より環境に配慮した形での開発をしようというものです。当然、ダム建設までにかかる時間は長くなってしまいますが、環境が一度破壊されてしまうと取り返しがつきません。下流の人々の暮らし、建設地周辺の人々の暮らしなど、さまざまなことを考慮した上で、環境に配慮した開発を行う必要があるのです。