日本語は時代とともに変わる

日本では、小学校入学以降、学校で国語の授業を通して日本語を学んでいきます。教科書を読み、先生の授業を受けて、正しい日本語の基礎を身につけることになります。しかし、これはあくまで『現代の』日本語です。日本語は時代とともに大きく変化してきた言語なので、昔の日本語は今と全く違っていました。  日本語が大きく変わった明治時代

今から100年以上前、明治時代の初めまでは、いわゆる古文が書き言葉として使われていました。今私たちが学校で学ぶような古文や、漢文を書き下したような文などが用いられていたのです。これらをまとめて文語体の文とよびます。しかし、話し言葉はそれらとはかなり違っていました。特に江戸時代には、話し言葉と書き言葉は全く違っていたようです。話し言葉は今の標準語と大きく変わらなかったようですが、文章を書く際、武士は漢文書き下し調の文や、文末に『○○候(そうろう)』を多用する『候文』という独特の文などを用いていました。この状況が変わったのは明治時代になってからでした。二葉亭四迷(ふたばていしめい)や山田美妙(やまだびみょう)ら文学者が、話し言葉と書き言葉を統一しようという『言文一致運動』を始めたのがきっかけといわれています。彼らは、あえて話し言葉に近い言葉で文章を書きました。『です』『ます』といった言葉遣いで文が書かれるようになったのはこのころからです。しかし明治時代には、なかなか書き言葉はひとつに定まりませんでした。森鴎外は、はじめ話し言葉に近い文体で書いていましたが、その後の『舞姫』などの作品では文語体に戻しています。また、この時代に用いられていたかなづかいはまだ歴史的かなづかいで、『ように』は『やうに』、『行ってみましょう』は『行つてみませう』といったように、現代のかなづかいとは大きな違いがありました。さらに、ひらがなを使わずカタカナを使う、といった書き方も一般的でした。社会で出てくる大日本帝国憲法の条文などは、漢字カタカナ混じりで書かれています。今のような文体に統一されたのは、戦後になってからのことです。私たちが使っている日本語の文体は、日本語の歴史から考えると非常に新しいものというわけです。

これからも変わる? 日本語

このように、日本語は100年あまりの間に大きな変化を経ています。逆に言えば、今後もそれだけ大きく変わる可能性を秘めていると言えるでしょう。現代の日本語においてよく問題となる『ら抜き言葉』や『若者言葉』は、話し言葉としては定着していますが、書き言葉としては用いるべきでないとされています。けれども、こうした言葉もいつか書き言葉としても認知される時がくるかもしれないのです。

正しい日本語を知った上で使い分けよう!

しかし、現代に生きる私たちにとっては、現在正しいとされる日本語をきちんと使えるようにしておくのも非常に重要なことです。日本語には、状況に応じた使い分けが求められるという性質があります。目上の人には敬語が必要ですし、作文などを書く際には改まった言葉で書かなければなりません。こうした『使い分けが必要』という性質は、変化を繰り返してきた日本語の歴史の中でも変わらず残っているものなので、使い分けが不要になるということはそうそうないと思われます。正しい日本語を理解した上であえて『ら抜き言葉』などを状況に応じて使い分けるの問題ありませんが、どんな時も『ら抜き言葉』『若者言葉』しか使えない、なんてことにならないようにしたいものですテストのとき、こうした言葉づかいで答えを書くと減点されてしまうこともあります。普段から自分の書く文はおかしくないか、言葉遣いはまちがっていないか、周囲の人に確かめてもらうようにしましょう。