『三大随筆』ってなんだろう?文学のジャンルのひとつに『随筆』があります。筆者が実際に見聞きしたことや、そこから考えたこと、感じたことなどをつづった文章のことをいいます。小説と並んで、入試の題材としても多く出題されています。日本では、古くから多くの文学者たちが随筆を書き残してきましたが、その中でも特に傑作と評価されているのが『三大随筆』とよばれる清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』、そして吉田兼好の『徒然草』です。『枕草子』は平安時代の国風文化を代表する文学作品。他の2つは鎌倉時代に書かれました。完成した時期こそ違うものの、三大随筆に共通して言えるのは、いずれも作者の優れた感性や知性が文章中にいかんなく発揮されていることです。それらにふれた時、私たち現代人は彼らの偉大さに改めて驚かされます。平安女性の姿を今に伝える『枕草子』『枕草子』を著した清少納言は、一条天皇の中宮(最上位の皇后)だった定子に仕えていました。当時の宮廷では、女性は皇后などの身の回りの世話をするだけでなく、話し相手、あるいは家庭教師的な存在でもあったため、相応の教養が求められました。その中でも清少納言はすぐれた教養を持っていたようで、『枕草子』では次のようなエピソードがつづられています。雪の日に「香炉峰の雪は?」という定子の問いかけに対し、清少納言がさっとすだれを上げてみせ、定子を喜ばせます。これは、中国の詩にある『香炉峰の雪はすだれをかかげて見る』という一節をふまえて定子が問いかけ、清少納言もそれをすばやく理解して対応したことを表しています。 武士の世の『無常観』をつづる『方丈記』『徒然草』華やかな宮廷を舞台にした『枕草子』と違い、『方丈記』『徒然草』は武士の世となった当時の世相を色濃く伝えています。源氏と平氏が争った、人がいつ死ぬかわからない戦乱の時代を経て、鎌倉時代の知識人たちは『無常観』を持つようになりました。『世の中も人も移り変わり、いつまでも同じものはない』というこの考え方は、『方丈記』『徒然草』にはっきり表れています。『方丈記』の有名な書き出し「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」はまさに無常観の表れといえます。また吉田兼好は『徒然草』の中で、無常の世の中で欲に惑わされずいかによく生きるかを追求しています。 現代語で読める『三大随筆』、入試までに読んでおこう!『三大随筆』の魅力はまだまだあり、とても紹介しきれないぐらいです。また、『三大随筆』は入試でも頻出。古文の問題として出題されるのはもちろん、『三大随筆』の作品名や作者を書かせる入試問題もしばしば目にします。ということで、入試までにぜひ一度読んでほしいです。でも、原文をそのまま読むのは非常に大変。そこでお勧めなのが、わかりやすく現代語に訳してある本です。ひとつひとつのエピソードは短いので、現代語になっていれば読書感覚で気軽に読むことができます。また最近は、受験生向けにあらすじや有名なエピソードを簡単にまとめた本も出版されているので、短時間で効率よく内容を把握したいという人はこちらを読んでみるのもいいでしょう。