そもそも『PM2.5』ってなんだろう?

ここ1・2年で急速に耳にする機会が増えた『PM2.5』という言葉。ニュース知識が必要な中学入試ではぜひ押さえておきたい言葉です。では、どんな物質か知っていますか?

PM2.5とは『微小粒子状物質』ともよばれ、空気中を漂う非常に小さな物質です。大きさ2.5マイクロメートル(1マイクロメートルは1mmの1000分の1)以下のものを指すためこの名があります。人間が吸い込むと、肺などの呼吸器の奥に入り込み、ぜんそくを引き起こすことが心配されるほか、心臓などの循環器にも影響を及ぼす危険性があると言われています。

日本では、PM2.5についての環境基準は、1日の平均値が1平方メートルあたり35マイクログラム以下であることとされていますが、2013年には、日本でこれを上回る数値が観測されました。地方自治体の中には、毎日PM2.5の濃度を測定し、ホームページで公表する場所も増えています。もし環境基準を超える濃度になることが予想される場合には、外出をひかえたり、窓を閉めたりするよう呼びかけています。

 

PM2.5について騒がれるようになったのはどうして? 

PM2.5は工場のけむりや自動車の排気ガスなどにふくまれているので、当然日本でも排出されています。しかし、日本国内でのPM2.5排出量は減少傾向にあります。これは、日本では環境対策が進んでいて、工場のけむりや自動車の排気ガスなどをよりきれいにするための改良が行われているからです。

それでは、どうしてPM2.5について日本で騒がれるようになったのでしょうか。

答えは『中国の排出量が増えたから』です。中国は近年急速に経済発展が進み工業の発展が著しくなっていますが、その反面環境汚染も深刻です。北京など中国の大都市は、大気汚染のため空がにごり、見通しが悪くなるほどに空気が汚れています。こうした大気汚染物質の中にPM2.5が大量にふくまれているのです。北京では、1平方メートルあたり800マイクログラム以上のPM2.5が観測されたというデータもあり、市民の健康被害は深刻なようです。

 

どうして中国のPM2.5が日本に飛んでくるの? 

中国で発生したPM2.5などの大気汚染物質は、上空にのぼるとある風の影響を受けます。それは、日本上空でも常に吹いている『偏西風』です。偏西風はその名の通り、年間を通して西から東に吹いています。そのため、中国のPM2.5は上空に巻き上げられたあと日本方面に流れていくのです。偏西風の流れは季節によって少しずつ変わるため、時期によっては中国からのPM2.5が日本の広い範囲に到達することもあります。特に春先には、中国内陸から飛んでくる黄砂に混じって大量のPM2.5が日本にやってくると言われています。

 

環境問題は、地球規模で考える必要がある

かつて高度経済成長期に様々な公害を経験した日本は、国を挙げて環境保全に取り組み、成果を上げてきました。いまや日本は、環境技術の分野でも世界をリードする先進国です。

しかし、PM2.5の例でも分かる通り、日本国内だけの取り組みでは不十分と言えます。環境問題は、地球規模で取り組まなければならない問題です。特にPM2.5のような大気汚染は、国境を超えた汚染が起こりやすい分野です。

日本は、中国への技術協力や共同研究の推進などを通して、中国でのPM2.5排出量を減らす取り組みも進めています。日本には、自らの経験をふまえて、きれいな地球を次の世代に残すための役割が求められているといえます。私たちも、環境問題についてもっと知り、自分たちに何ができるのかを考えていく必要がありますね。