丸暗記だけでは限界がある日本の学校教育を受けてきたみなさんは、『丸暗記』をした経験があると思います。小学校に入学すると、低学年でかなや漢字、かけ算の九九などを覚えます。中学生・高校生になると、テスト前に単語や熟語、例文、公式などを丸暗記する人もいるでしょう。しかし、同じことを暗記するにしても、すぐに覚えてしまう人もいれば、何度繰り返してもなかなか覚えられないという人もいます。また、せっかく覚えたのに、数日経ったらもう忘れてしまったという経験がある人も多いでしょう。一生懸命勉強したのに、テストのときに覚えていないのではガッカリですよね。実は、単純な丸暗記だけでは知識を定着させるのには不十分であり、しっかり覚えてテストの得点を上げるには、工夫が必要なのです。丸暗記した知識は、なぜすぐに忘れてしまうのか?ただの丸暗記で覚えた知識というのは、どうしても忘れがちなものです。みなさんは日々新しい知識を学んでいるので、それらを処理する脳は大忙しです。脳はコンピュータとは違い、インプットした知識をすべて残しておくことはできません。限られた処理能力のなかで、次から次へとやってくる新しい知識を仕分けし、必要だと思うものだけを残すようにしています。そうでないと脳はパンクしてしまうのです。丸暗記した知識は、多くの場合直後に迫ったテストの際にしか使われません。テストが終われば次の単語、次の知識がインプットされていきます。新しい知識を記憶として留めるために、前回のテスト用に覚えた『用済みの』知識を処分する、ということが脳内では行われているのです。そのため、丸暗記の知識はなかなか定着せず、しばらくすると「あれ、せっかく覚えたのに思い出せない……」なんてことになるのです。 理解して覚えたことは忘れにくいこれを防ぐためには、脳に「この知識は重要だな。捨てないでおこう。」と思わせることが必要です。その方法の一つが『理解して覚える』ということです。理解するという作業を行うと、2つ以上の知識の間につながりが生まれます。複数の知識が関連づけられると、それらの知識の脳内での優先順位が上がります。また、知識同士がつながっていくと、その知識を使う機会が増えていきます。その結果、関連する知識全体が忘れられにくくなり、記憶に残りやすくなるのです。たとえば、「平安時代に国風文化が栄えた」という知識を単純に丸暗記するのではなく、「平安時代になると唐の情勢が不安定になったので、遣唐使が廃止され、大陸との文化的交流が減った。そのため、唐の影響が薄れ、日本風の(=国風)文化が栄えた」と、出来事の背景や流れを理解してから覚えるようにすれば、知識同士が結びつくので、記憶に残りやすくなります。「丸暗記しては忘れる」を繰り返している人は、まずは理解することを心がけてみてくださいね。