思考力・表現力重視の課程へのシフト日本の近年の教育課程は、暗記中心から思考力・表現力重視へと舵を切りました。その影響もあって、暗記・暗誦の取り組みは以前ほど顧みられなくなっているように思われます。例えば、かつて国語の授業では定番だった『枕草子』『徒然草』『平家物語』などの有名作品の暗誦は、近年あまり行われなくなっています。また、入試でも単純な知識を答えさせる問題が減り、与えられた資料を読み取って答える問題や、短文や文章での記述問題が増加しています。低学年からの暗記・暗誦の重要性しかし、こうした教育課程のシフトの一方で、暗記・暗誦の重要性もまた見逃すことはできません。特に、低学年からの暗記・暗誦は、学習の基礎を築く上で大事なことです。思考力・表現力は、学力調査などの結果から日本の弱点とされており、確かに世界的に見ると日本の教育課程の課題として向上させていくべき分野ではあります。しかし、論理的思考力とは、あくまで身につけた知識を活用しながら論を組み立て、結論を導く能力です。基礎となる知識がなければ、論理の組み立てもできません。思考力の基礎となるのは、低学年のころから覚えてきた知識です。まずは暗記・暗誦を通じて知識を吸収する必要があるのです。また、小さな子どもは記憶力に優れ、自然と知識を暗記していく能力を持っています。記憶力は18歳ごろから低下するといわれていますが、逆に18歳までの子どもは高い記憶力を活かしてどんどん知識を吸収することができるわけです。こうした面からも、低学年のうちに暗記・暗誦をして基礎知識を蓄えることは有効だといえます。 英語学習低年齢化に対応するには、幼少期からの暗記・暗誦が不可欠特にこれからの時代、暗記・暗誦を通じて身につけていきたいのが英語の基礎です。2020年までに実施される予定の新学習指導要領では、小3から英語が必修化される上、中学校以上では授業を原則として英語で行うとされています。英語を低年齢から身につけていくことがますます求められる時代になってくるわけですが、英語を使いこなすには基本となる単語・構文の知識が不可欠です。記憶力が最も豊かで、知識を吸収しやすい幼少期に基本的な単語・構文を覚えておくようにしたいものです。特に有効なのが暗誦です。テキストなどの基本構文を暗誦することで、基礎となる英語表現を覚えるだけでなく、発音の練習もでき、英会話に対する抵抗をなくすことができます。アルファベットを覚えたら、少しずつ暗誦に取り組んでいくとよいでしょう。 国語力の基礎づくりにも、暗記・暗誦が役立つ一方、日本語の漢字・語彙などの習得も忘れてはなりません。小学生が行う漢字ドリルのトレーニングは、日本語の基礎を作る上で必須です。中学生・高校生は、『枕草子』『平家物語』などの古典の序文について暗誦できるようにしておきましょう。入試でこれらの序文の知識がそのまま問われることもありますし、覚えた序文の知識が後の学習で役立つことも多いです。ぜひ、積極的に暗誦に取り組んでみてください!