子どもの読書離れが深刻に文部科学省の『平成25年度 国語に関する世論調査』によれば、読書量が以前に比べ「減っている」と答えた人は全体の65.1%にのぼり、読書離れの傾向がみられます。特に、読書量が減っている理由を尋ねた項目では、半数以上が「仕事や勉強が忙しくて読む時間がない」を理由として挙げています。また、「情報機器(携帯電話、スマートフォン、タブレット端末、パソコン、ゲーム機等)で時間が取られる」という理由を上げた人も26.3%にのぼりました。この調査からもわかるように、現代の子どもたちを取り巻く読書環境は、決してよいとはいえません。情報機器がすぐ手の届くところにある子どもたちは、読書よりスマホやタブレットに目が向いてしまい、本を読みたがらないケースが非常によくみられます。 読書経験の不足は試験にも影響するしかし、子どもの時期に読書経験を積んでおくことは、どの科目の勉強にも増して大事なことです。試験は文字で出題されるので、大量の文字を素早く正確に読めなければ、どんな科目の問題も解けないのです。子どもたちを見ていると、問題文の読み落としによるミスは、そもそも問題文を読まないがために発生することも多いように思われます。ミスの多い子どもは、読書習慣がないため、文章を読むのが苦痛で、長い文を見たらまず『読まない』という選択をしがちです。 小説を読む経験が重要な理由とは中でも、子どものころに読んでおくべきなのが小説です。こう言うと、「小説は事実じゃないんだから読む必要はない」などという反論を受けることもあるのですが、国語の指導をしていると、小説を読む経験がいかに重要かを痛感します。ご存知のとおり、小説では、主人公をはじめとする登場人物の行動や心情を描きながらストーリーが展開していきます。小説を読むことで養われる能力は、主に以下のようなものです。 ①読み進める力小説は、冒頭から順に読んでいかないとストーリーがつかめません。小説を読み慣れている子どもは、『文章を初めから読み進める』という、すべての文章読解における基本が身につきます。 ②想像する力小説は、作者の空想の世界で展開されます。読者は、文章からそれを読み取りながら、自分の中でイメージをふくらませて読んでいくことになります。つまり、小説を読み続けることで、想像力が身につくのです。特に、国語の問題では、作者が描いた世界を『正しく想像する力』が必要です。 ③登場人物の心情を読み取る力そして、小説で最も重要なのが登場人物の心情の読み取りです。すべてを文字で表現する小説では、登場人物の心情は、人物の発言だけでなく、行動やしぐさ、あるいは周囲の情景描写など様々なところに表れます。②とも関連しますが、こうした発言に表れない人物の心情を、描写を読み取って想像する力というのは、小説を読んでいないと身につきません。そして、国語の勉強としてだけでなく、実生活の上でも、相手のささいなしぐさから相手の心理を探るというのは非常に重要です。それができず、自分の思ったままに発言・行動する人は『空気が読めない』と言われ嫌われるのが現代社会です。小説を読むことで、実社会で役立つ力も身につくのです。小説を読む習慣がない人は、短いものからでもいいので、ぜひ小説を読み始めてはいかがでしょうか?