私立中との併願者が多いという現実

中高6年一貫教育、学費の安さ、そして東大合格者も出るという学力レベルの高さで人気を集める公立中高一貫校。特に首都圏などの都市部では、もともと中学受験への関心が高い人が多いこともあり、公立中高一貫校は毎年多数の受験者を集めています。

しかし、実際のところ、公立中高一貫校受験者のうちかなりの数が私立中との併願組となっているようです。東京・神奈川の中学入試の場合、公立中高一貫校は2月3日に試験を行うので、国立中との併願はできなくなっていますが、1月中、あるいは2月1日・2日の私立中入試との併願は定番パターンになっています。

また、私立中向けの偏差値ランキング表を見ても、公立中高一貫校は難関私立中なみの格付けになっています。ここからも、併願校として公立中高一貫校が一定の地位を得ていることがわかります。 

私立併願組と公立単願組の差はどこに?

もちろん、目標を公立中高一貫校一本に絞り、適性検査や作文の対策に集中して合格を勝ち取っている生徒も例年数多く出ています。決して、私立中との併願組でなければ合格できない、ということはありません。

しかし、公立中高一貫校しか受けない場合でも、ライバルの多くが私立併願組ということは意識しておく必要があります。実際に適性検査・作文を解くにあたって、私立中との併願組と公立中高一貫校単願組では違いがあるということを理解しなければならないからです。

私立併願組は、算数・理科的分野では公立単願組より強いといえます。単純な知識量でいえば、私立併願組のほうが有利といえます。また、近年の公立中高一貫校適性検査では、仕事算や旅人算、比の応用など小学校ではほとんど扱わない事項もしばしば出題されていますが、これらも私立併願組にとっては普段から勉強していることばかりです。

そして、私立併願組は公立中高一貫校受験の時点ですでに私立中を受験している場合がほとんどです。しかも、多くの場合は合格通知をもらって自信をつけています。一方、公立中高一貫校はすべて同日に試験が行われるため、公立単願組は併願ができません。受験経験の面でも私立中組に一日の長があるといえます。一方、公立単願組は適性検査の出題パターンを繰り返しトレーニングするので、適性検査独特の問題に強みがあります。

作文や記述式解答の練習量では、公立単願組に分があります。いくら知識量があっても、記述式解答や作文に対応し、論理的に表現できなければ公立中高一貫校には合格できません。特に作文は、私立中入試ではまず出題されないので、やはり公立中高一貫校専門の勉強をしている受験生のほうが有利といえるでしょう。

私立併願組・公立単願組それぞれの対策

もし、私立中と公立中高一貫校を併願するなら、公立中高一貫校独特の記述式解答や作文に対応できるかがカギになります。私立中の受験勉強と並行して、過去問などを利用して問題演習を繰り返し、問題形式に慣れておきましょう。公立中高一貫校しか受けないという場合は、算数・理科についてはある程度私立中レベルの学習も必要になります。しかし、全ての問題が私立中レベルというわけではありませんし、全問解けなければ合格できないわけでもありません。時間配分に気を配り、時間がかかりそうな問題を後回しにして、確実に解ける問題を優先して解くことができれば大丈夫です。また、模試などで本番に近い緊張感を味わい、場慣れをしておくことで、私立併願組との経験の差を埋めることができるでしょう。