『公立大学法人化』で地方私立大学が人気校に?

近年、長引く景気の低迷や少子化の進行にともない、特に地方の私立大学では学生が集まらずに経営が悪化するケースが増えています。受験生は学費の安い国公立大学に集中するため、地方の私立大学は志願者数も入学者数も少なくなり、学生の質が下がって社会的評価も低迷し、ついには経営が困難になる、という悪循環が起きているのです。しかし、私立大学の中には『公立大学法人化』という手法で国公立大学の仲間入りを果たし、多くの受験生を集める人気校へと変貌をとげる大学もあります。これは一体、どういうことなのでしょうか? 公立大学法人化すると、なぜ人気になするの?

簡単に言えば、私立大学の公立大学法人化とは、私立大学が公立大学へ変わるということです。当然、学費も安くなります。私立大学に人が集まらない理由のひとつに、学費が高いことが挙げられます。公立大学と私立大学では、学費に約2倍の開きがあります。特に理系の大学ではこの開きがさらに大きくなるので、地方の理系私立大学は学生募集でかなり苦戦する傾向にあります。しかし、公立大学になることで学費が一挙に安くなります。いわば『学費の半額セール』です。国公立大学志望の学生にとって、こんな『おいしい』話は滅多にありません。そして、「どこでもいいから何としても国公立大学に行きたいけれども、センター試験の結果が思わしくなかった」という受験生も集めることができます。結果として、公立大学法人化をすることで受験生が急増すると考えられます。

本当にあった、公立大学法人化での一発逆転

こうした例は、現実にも起こっています。例えば、2009年度に公立大学法人化された高知工科大学は、私立大学時代には定員割れのいわゆる『Fランク大学』でした。しかし、公立大学法人化が決まったあとの2009年度入試では志願者が急増し、それ以後は全体として入学者数が定員を上回る状況が続いています。
(出典:高知工科大学ホームページhttp://www.kochi-tech.ac.jp/kut/entrance_examination_UGS/data_UGS_exam/kako.htmlなど)

公立大学法人化する可能性のある大学とは

では、公立大学法人化する可能性がある大学とは、どんな大学なのでしょうか。

ズバリ、それは『公設民営大学』です。

つまり、地方自治体の出資で設立されたけれども、運営は民間の学校法人が行うので私立大学扱い、という大学です。大学は高等教育機関として、地域の未来を支える若者を育てるという社会的使命を帯びています。特に大学の少ない地方部において、地域に大学を設置することは、若者の都市部流出を食い止め地域を活性化するための有効な手段です。そうした経緯から、地方自治体が出資してつくられたのが公設民営大学です。経営が傾いたからといって、そう簡単になくすわけにはいかない大学というわけです。実は、先述の高知工科大学も元々は公設民営大学でした。全国の公設民営大学の間では公立大学法人化の動きが強まっていて、他にも鳥取環境大学(鳥取県)や名桜大学(沖縄県)などがすでに公立大学法人化されています。

また、2016年度からの公立大学法人化で合意(出典:朝日新聞http://www.asahi.com/articles/ASGDP4S9MGDPTZNB005.html)した山口東京理科大学(山口県)のように、今後も公立大学法人化の動きは続いていくものと思われます。どうしても国公立大学に行きたいという受験生は、こうした公立大学法人化の情報をチェックしておくことも必要といえそうです。