奨学金、安易に考えていませんか?

大学や専門学校などに進学するには、当然ながら学費が必要です。学費が安いといわれる国立大学でも、一部のコースを除き初年度には入学金28万2,000円、授業料年額53万5,800円(2015年度入学生)が必要です。もし私立大学であれば、学費はこれよりもはるかに高くなりますし、遠方の学校なら交通費や下宿代、生活費などもかかります。

そこで、進学のため奨学金を利用するという場合があります。しかし、一部の給付型奨学金を除き、奨学金のほとんどは貸与型、つまり借金です。そのため、利用にあたってはよくよく考えなければなりません。安易に奨学金を利用してしまうと、人生設計が大きく狂わされることにもなりかねないのです。

 

意外と恐ろしい? 貸与型奨学金のシステム

貸与型奨学金は、学生が在学中に学費を借り、卒業後に社会人として働きながら返済していくというシステムになっています。実は、このシステムの中に奨学金のこわさが隠れています。

奨学金を借りるのは学生です。しかし、奨学金を利用するよう勧めるのは、圧倒的に親や学校の先生です。そのため、学生本人は、深く意識しないままに借金を背負ってしまい、卒業してから返済に苦しむことになりかねないのです。

 

『貸与型奨学金=借金』という意識の薄さ

奨学金制度を運用している日本学生支援機構が行った『平成25年度奨学金の延滞者に関する属性調査結果』(http://www.jasso.go.jp/statistics/zokusei_chosa/25_chosa.html)では、奨学金を返済中の人について、返済が滞っていない人(無延滞者)と3カ月以上滞納している人(延滞者)に分け、様々な調査が行われました。それによると、奨学金申請を「勧められた」と回答した人は無延滞者・延滞者とも全体の6割を超えています。

また、「奨学金の返還義務をいつ知ったか」という質問に対しては、無延滞者では「貸与手続きを行う前」と回答した人が92.5%と圧倒的多数でした。しかし、延滞者の場合は「貸与手続きを行う前」の割合が56.1%まで下がります。その一方で「貸与手続き中」10.2%、「貸与中」5.3%など『借りてから』返済義務を知ったという人が多数いることがわかります。なかには「延滞督促を受けてから」と答えた人も9.4%いました。

つまり、周囲に勧められるまま奨学金申請をした人の中には、『貸与型奨学金=借金』ということを意識しないまま学生生活を送り、卒業後に返済を求められて「えっ、本当に返さないといけないの?」と驚く、という人が一定数いることがわかります。

 

卒業後のことをよく考えて!

奨学金を利用する際は、将来、返済の必要があるのか、ある場合は返済額がどれだけになるのか、くれぐれもよく考えて利用する必要があります。返済義務のない給付型奨学金が受けられるのならそれに越したことはありません。貸与型しか受けられない場合は、借りる前にしっかりと制度の説明を受け、返済額のシミュレーションなども確認しておいたほうがいいでしょう。

奨学金の返済は、借りた額にもよりますが、月数万円の返済が15~20年にわたって続くこともあります。せっかく進学するのですから、大学や専門学校での学業に真剣に取り組むのはもちろん、社会人として生活しながら奨学金を返済できるだけの収入を得られる職業に就くことも早いうちから考えておく必要があります。