変わる社会科の教科書

時代や社会の移り変わりとともに、また研究の進歩とともに、社会科の教科書の内容は少しずつ変化してきています。そのため、今の子どもたちが使っている教科書と、親の世代が使っていた教科書では、様々な違いがみられます。中でも、用語の変化には「なんで変わったの?」と戸惑うこともしばしばです。しかし、変わるのにはもちろん理由があるのです。

今回は、そんな社会科の教科書の変化についてみていくことにしましょう。なお、変更点やその理由については、社会科の教科書や地図帳を発行している帝国書院のホームページ内『社会科Q&A』(https://www.teikokushoin.co.jp/q_and_a/geo/index.htmlほか)を参考にしました。

 

『リアス式海岸』が『リアス海岸』に!

まず、地理における変化です。

代表的なのが『リアス式海岸』から『リアス海岸』への変化です。かつては『リアス式海岸』が一般的でした。しかし、現在は『リアス海岸』と教えられることがほとんどで、教科書にもそう書いてあります。

帝国書院のホームページでは、“「リアス(rias)」とは、スペイン語で入り江を意味する「リア(ria)」の複数形です。……「リアス」そのものが入り江の地形を表す語であるので、あえて「式」を入れる必要はなく、地理学・地形学の学術用語としては「リアス海岸」という表記がより適切であるとされるようになりました。”と説明されています。

つまり、本来不要な『式』が入ったまま定着していたけれども、不要なので外しました、ということです。

また、かつては韓国やシンガポールなどアジアで新たに発展してきた国・地域を指す『新興工業経済地域(NIEs)』という言葉がよく使われていましたが、今の帝国書院の教科書には載っていません。これには、これらの国・地域の工業・経済がすでに進展して、もう『新興』とはいえないという事情があるようです。

 

『聖徳太子』が出てこない?

歴史の教科書でも、様々な用語が変わってきています。

たとえば、有名な『聖徳太子』は、近年では『聖徳太子(厩戸王子=うまやどおうじ)』とカッコ書きが付されたり、あるいは聖徳太子の名を紹介せず単に『厩戸皇子』と表記されたりしています。実は、『厩戸皇子』は聖徳太子の本名で、しかも聖徳太子という呼び名は死後に贈られたものなのだそうです。ということで、『厩戸皇子』あるいは『厩戸王』『厩戸王子』といった、本名に従った呼び方になってきているのです。

また、以前の学校では『いい国つくろう鎌倉幕府』のゴロ合わせで『鎌倉幕府成立=1192年』と覚えるよう教えられていましたが、これも近年では使われなくなってきました。というのも、鎌倉幕府のしくみ自体は1180年から少しずつ整えられていて、源頼朝が征夷大将軍になった1192年以前から幕府としての機能は備わっていたからなのです。そのため、鎌倉幕府の成立については教科書によって扱いが違ってきています。学校でも、平氏が滅び,全国に守護・地頭が置かれた1185年にちなんで『いい箱つくろう鎌倉幕府』と教えられたり、あるいは成立した年を扱わなかったりするようです。

他にも、様々な点で社会科の用語は変わってきています。興味をもった方は、ぜひ調べてみてください!