小論文試験、もうひとつの目的とは

推薦・AO入試や、医療・福祉系の学校の入試では小論文がよく出題されます。小論文試験は、受験生の論理的思考力を確認するのに最適な試験です。論理的思考力は、高度な学習をする上で欠かせない、全ての学習の基礎になる能力です。学力試験を課さない推薦・AO入試では、受験生の基礎能力を測定するための素材として、小論文は非常に適しているといえます。

 

しかし、小論文が出題されるのは、論理的思考力を測るためだけではありません。もう一つ、重要な目的があるのです。

 

小論文試験では、書き手の性格や人間性もチェックされる

小論文試験では、書いた人の性格や人間性もチェックされています。小論文を書くとき、書き手は自分の知識、経験、学んだ内容、あるいはちょっとした思いつきなど、頭の中にあるものを総動員して文章を構成していきます。そのとき、知らず知らずのうちに書き手の性格や人間性が文章に宿るのです。

 

言い換えれば、採点担当者は、小論文から受ける印象で、受験生を判断することがあるというわけです。そこで、小論文を書く上で心がけたいことは以下の2点です。

 

攻撃的・極端な主張はNG

まず、攻撃的、あるいは極端な主張をするのは避けましょう。言うまでもなく、学校は多くの学生・生徒がともに暮らす集団生活の場です。そのため、人物面を重視する推薦・AO入試では、集団生活がうまく送れる協調性の高い生徒のほうが優先されやすいといえます。

小論文で、他者、特に弱者を排除することを当たり前とするような主張をすると、協調性がないとみなされやすくなります。

 

あるいは、「科学技術は地球を汚染するから、人間は文明を捨てて原始に戻るべきだ」といった極端な主張も避けたほうがいいです。極端な主張は現実味がないだけでなく、周囲に受け入れられないので協調性を評価する上でもマイナスです。特に、協調性や周囲への思いやりがとりわけ求められる医療系の入試ではなおさら注意が必要です。ひとりよがりな論にならないように気をつけ、周囲との共存ができる姿勢を文章の中で見せていくようにしましょう。

 

問題文の指示にはきちんと従う

もう一つ、採点官の印象を悪くしてしまうのが、問題文の指示に従わない場合です。例えば、AとB、2つの立場を挙げ、そのうちどちらがよいかを3段落構成で論じる問題があったとします。この問題に対して、「A、Bどちらの立場にも、よい面もあれば悪い面もある」と、両者を比べるだけで終わってしまい、『どちらがよいか』という問いに答えていない小論文を書いても、高得点はもらえません。また、Aの立場もBの立場も無視して、全く違う主張を論じるのも大幅減点のもとです。

 

先ほども述べたように、学校では協調性も求められますが、その根底にあるのは相手の話をきちんと受け止めて理解し、適切な答えを返すコミュニケーション能力です。問いに対してきちんと答えるのは、コミュニケーションの基本のひとつです。しっかりと問いを読んで理解し、それに合った小論文を書くようにしたいですね。