高倍率が続く公立中高一貫校入試

今や、全国的に定着してきた感のある公立中高一貫校受験ですが、一方では毎年合格のため激しい競争が繰り広げられています。卒業生が東大など難関大学に多数合格して実績を出していることもあり、首都圏の公立中高一貫校入試は各校とも高倍率が続いています。

たとえば、2015年度の都立中等教育学校・中学校の一般枠募集における応募倍率は平均6.52倍、受験倍率も平均6.22倍でした。(出典:東京都教育委員会ホームページ)

 

不合格になったら、受験は無駄?

このように入試は高倍率、しかも私立中と違い定員以上の合格者が出ない……という状況では、合格者よりはるかに多くの不合格者が出ます。そのため、「まだ小さい子どもに受験勉強をさせて、しかも不合格になったらかわいそう」という声もよく聞かれます。また、「高い塾代・家庭教師代を払っても、不合格になったら無駄金になる」と考える親も少なくないようです。

しかし、公立中高一貫校受験の経験は、たとえ不合格になったとしても決して無駄にはなりません。公立中高一貫校受験は、次に待ち受ける高校受験の時、子どもに貴重な経験と学力を与えてくれるのです。

 

高校入試で役立つ、受験経験

公立中高一貫校の入試問題で求められる学力レベルが、小学校の教科書レベルの勉強よりはるかに高レベルなことはご存じの方も多いはずです。しかも、公立中高一貫校の入試問題は、たんなる詰め込み型の勉強だけでは解けないように工夫されています。そのため、公立中高一貫校の受験勉強では、こうした問題に対応できる思考力・応用力・表現力・記述力などの『真の学力』が鍛えられます。

実は、こうした『真の学力』が、今度は高校受験で役立つのです。

日比谷・西・国立をはじめとする都立難関校のように、多くの上位公立高校は、入試において自校作成問題を導入しています。この自校作成問題で求められているのが、まさに上で述べたような『真の学力』です。

中学受験を経験せずに公立小学校から公立中学校に進学した生徒が、中学3年までの通常の学習でこうした力を身につけるのは至難の業です。公立中学校の授業だけでは質・量とも十分ではなく、かといって塾通いをしても自校作成問題を解けるレベルまで学力を積み上げるには相当の学力的下地がないと難しいでしょう。

しかし、公立中高一貫校受験を経験している生徒なら、少なくとも学力的な基盤はしっかりと身についているはずです。また、難関校合格を実現するために最も必要な日々の学習習慣の点でも、受験を経験していない生徒に比べ有利です。

一言でいえば、公立中高一貫校受験組は、受験未経験者とは経験値が違うのです。

 

合格でも不合格でも、受験には十分なメリットがある

もちろん、不合格という経験は子どもの精神面に少なからずダメージをもたらすでしょう。一生懸命がんばった入試で不合格になって、落ち込まない人はいません。しかし、それを考慮しても、次の高校受験のことを考えれば、公立中高一貫校受験には十分なメリットがあるといえます。もちろん合格できればそれに越したことはありませんが、たとえ不合格でも得られるものは大きいのです。

「高校は公立、できれば難関校に行ってほしい」と思うのであれば、公立中高一貫校受験にチャレンジさせてみる価値はあるのではないでしょうか。