入試に出そうな『明治日本の産業革命遺産』

2015年7月、ユネスコ世界遺産委員会で『明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業』(以下『明治日本の産業革命遺産』)が世界文化遺産に登録されました。世界遺産、特に入試の前年に登録されたものは、社会の入試問題では頻出事項となっています。

 

2016年度入試にはかなり多くの中学・高校の入試で『明治日本の産業革命遺産』に関連した問題が出題されることが予想されるため、中学・高校の受験生はぜひ押さえておきたいところです。

 

そこで今回は、この『明治日本の産業革命遺産』の内容についてみていきましょう。

 

参考:『明治日本の産業革命遺産 九州・山口と関連地域』

URL: http://www.kyuyama.jp/index.html

 

どこの県にあるの? 主な構成資産は?

『明治日本の産業革命遺産』の最大の特徴は、含まれる遺産(構成資産)の数が非常に多く、そして広い地域にまたがっていることです。構成資産は、鹿児島・熊本・長崎・佐賀・福岡・山口・静岡・岩手の8県にある全23カ所で、これまで日本で登録された世界遺産の中でももっとも多くの県にまたがる世界遺産となっています。八幡製鉄所をはじめとする製鉄施設や、製鉄に不可欠な石炭を産出する炭鉱の跡など、鉄づくりに関係の深い構成資産が多いのが特徴です。

 

続いて、以下に主な構成資産をご紹介します。

 

・端島(はしま)炭坑

長崎市の沖合に浮かぶ端島(はしま)は、明治時代から戦後にかけて石炭の採掘が行われた島です。日本初の鉄筋コンクリート造高層住宅が建てられた島としても有名で、高層建造物が立ち並ぶ姿を海上から見ると軍艦のように見えるため『軍艦島』とも呼ばれています。また、コミック・アニメ作品の実写版映画『進撃の巨人』のロケ地としても有名です。

 

・官営八幡製鐵所

日清戦争後の下関条約で清から得た賠償金をもとに、現在の福岡県北九州市に建設され、1901年に操業を開始しました。中国から輸入した鉄鉱石と、近隣の筑豊炭田、あるいは端島炭などの石炭を用いて生産が行われ、北九州工業地帯の中心的存在でした。なお、現在も製鉄所として使用されているため、旧本事務所をはじめ世界遺産登録された構成資産はいずれも非公開となっています。

 

・松下村塾(しょうかそんじゅく)

江戸時代末、吉田松陰によって現在の山口県萩市に設けられた私塾です。諸説ありますが、吉田松陰は安政の大獄で捕らえられて死刑となったため、ここでの指導はわずか2年10カ月だったそう。学んだ人物には、高杉晋作、久坂玄瑞(くさかげんずい)、伊藤博文、山縣有朋ら、幕末や明治維新で活躍した人物が多数います。

 

さらに、2015年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』の主人公:文(ふみ、のちに美和子)は吉田松陰の妹で、最初の夫は久坂玄瑞、再婚相手の楫取素彦(かとりもとひこ)も吉田松陰の友人という、松下村塾と非常に縁の深い人物です。

 

世界遺産同様、大河ドラマになる歴史上の出来事も入試問題の素材にされやすいネタです。吉田松陰・松下村塾は今後数年にわたりチェックしておきたい事項でしょう。

 

『明治日本の産業革命遺産』は入試ネタの宝庫!

他にも、製鉄に使われた静岡県の韮山(にらやま)や、萩、鹿児島の反射炉、岩手県釜石市の橋野鉄鉱山・高炉跡など、今回登録された世界遺産は全国各地に点在しています。しかも、日本の歴史に関係のある構成資産が多いのも特徴です。

 

ということは、入試問題を作る側にとってはさまざまなタイプの問題にこのネタを組み込みやすいということでもあります。あるいは、大問一つをまるまる『明治日本の産業革命遺産』関係で作ることも可能でしょう。時事問題や、特定のテーマに基づく問題がよく出題される学校を受験する人は、『明治日本の産業革命遺産』について必ずチェックしておきましょう。