大学受験の学力偏差値は、今も絶対的な価値観なのか?

 

2016年3月31日、「偏差値」というシステムの生みの親である桑田昭三氏が87歳で亡くなりました。

今や受験においてなくてはならない偏差値ですが、それを考え出したのが桑田氏であるということはあまり知られていません。

そもそも偏差値というものはどういった経緯で誕生し、広まったのでしょうか。

 

偏差値はいかに生まれ、広まったのか?

行われたテストの平均点を50に換算した場合の自身の点数が、そのテストの結果における偏差値の値となります。こうした数値を出すことによって、自身の学力が客観的に示されるのです。

 

桑田氏は都内の公立中学で教員を勤めていた1950年代に、統計処理の方法をヒントにして学力偏差値の算出方法を考え出しました。

なぜこのような方法を考えたのかというと、それまで進路指導は教師による絶対評価が主流でした。しかし桑田氏はより正確な形で生徒の学力を判断するために、偏差値という方法を用いたそうです。そして平均的な基準をそろえて数値を出す偏差値は、正確に実力を測ることができることから、合否判定の手段として急速に普及していきました。

 

こうした経緯で広まった偏差値は、今では受験において絶対的とさえ呼べるほど重要な存在となりました。しかし、まったく欠点がないわけではありません。

代表的な例としてあげられるのは、試験を受ける母集団のレベルによって生じる偏差値の不確実性です。

 

全国模試などの、あらゆるレベルの受験生が参加するテストなら平均的な偏差値が出ることでしょう。しかしレベルの高い人ばかりが受けた試験の結果だけで偏差値を算出しようとすると、学力が高いはずの人でも偏差値が低くなってしまうのです。

しかも近年の大学受験では、偏差値という価値観が以前ほど重大なものではなくなっているようです。次の章では、現在の大学受験における偏差値の状況について説明しましょう。

 

偏差値に頼らない受験方式が増加中

少子化にともなう受験生の減少は、受験の評価基準にも影響を及ぼしています。

近年では多くの受験生がなるべくレベルの高い大学を目指す傾向にあるようです。その一方であまりレベルが高くない大学では定員割れを起こし、人気のある大学とそうではない大学の間で二極化が進んでいます。

 

このような現状から、一般入試の受験者数が少ない大学では、立地の便利さや取得できる資格、就職率といった学力とは違う観点から大学の魅力をアピールするようになっています。一般入試以外の採用枠も多く設けており、中にはAO入試での採用枠を定員の5割まで設定している学校も存在しています。

 

このように、大学を選ぶ基準は以前に比べて多様化しているのです。そんな現状を踏まえると、今や偏差値は受験において絶対的な基準だと言い切ることはできません。

とはいえ一般入試を受ける受験生にとっては、偏差値が重要であることに変わりはありません。半世紀以上も前に考え出されたシステムが今も有効であることを思うと、桑田氏の功績は非常に大きいものであったといえるでしょう。