受験の地域格差を減らすための取り組みとは

地域格差の問題は、年々深刻になっています。

 

都市部と地方との間で人口や経済などの面で差が生じてしまい、公共サービスやインフラ整備といったさまざまな分野で影響を及ぼしています。これは地方に暮らしている人の住みやすさに直結する問題であり、有効な対策が必要とされています。

 

そんな地域格差によってもたらされる問題は、受験にも影響を及ぼしています。

 

レベルの高い受験勉強をするために、予備校や塾に通いたい受験生はたくさんいます。しかし予備校やいい塾というのは都市部に集中している傾向があり、そこから離れた場所に暮らしている受験生は時間とお金をかけて通うか、通うことをあきらめなければいけません。

 

また、最近では「大学の進学率は親の経済力に比例する」といったデータも示されています。

 

この事実に基づいて考えると、地域間における所得の違いも地方における進学率の低下に影響している可能性は高いといえるでしょう。

 

このように、受験における地域格差も深刻な状況です。しかし最近では、こうした弊害を解消するための取り組みも行われるようになってきました。

 

今回は、その中でも特に注目されている2つの取り組みを紹介します。

 

オンライン予備校によって、どこでも予備校の授業が受けられるように

地方の、それも都市部から離れた場所で暮らしている受験生にとって、予備校や塾に通いにくいというのは大きな問題です。受験に目的をしぼった高度な授業が受けられないことで、予備校や塾に通っている都市部の受験生に差をつけられてしまいます。

 

2012年10月から本格的に稼動した「スタディサプリ」は、こうした問題の解決にもつながることから注目を集めています。

 

スタディサプリは無料会員でも、大学入試の過去の問題をダウンロードしたり、センター試験の模試が受けられるといったサービスが利用できます。さらに毎月980円(税抜)を支払うと、パソコンやスマートフォンを通じて人気の高い予備校講師の授業が受けられるようになっています。

 

高い交通費を支払って予備校に通う必要がないだけではなく、1カ月に980円と低価格なので、経済的に厳しい家庭の高校生でも予備校とほとんど変わらない授業を受けることができます。スマートフォンを利用する高校生が増えたことも影響して、2014年の時点で無料会員の数は累計100万人を越えました。

 

こうした「オンライン予備校」と呼ばれるインターネットを通じた授業のシステムはさらに普及が進んでおり、受験生の地域格差の緩和につながる存在として期待されています。

 

隠岐國学習センターが開く、離島教育の新しい可能性

日本に数多く存在している離島では、教育における地域格差は特に深刻です。

 

都市部と比べるとけっして充実しているとは呼べない学習環境の中で子供たちの学力を高めるためには、はたしてどうすればいいのか? そんな問いに対する1つの可能性として、島根県の隠岐島にある「隠岐國学習センター」という公立学習塾が行っている取り組みに、関心が集まっています。

 

この学習塾は「島前高校魅力化プロジェクト」と呼ばれる教育改革を目的とした取り組みの一環として、2010年に開設されました。

 

その特徴は、地域で唯一の高校である隠岐島前高校と連携を図り、学校での学習内容をふまえた上で、さらに学力を高めるための学習支援を行っているという点にあります。生徒に対しては、それぞれが独自のカリキュラムに基づいて主体的に勉強を進めるように指導しています。

 

隠岐國学習センターの取り組みは、学力向上の支援だけにとどまりません。「夢ゼミ」というプロジェクトベースドラーニング型授業を通して、生徒自身に明確な将来像やキャリアデザインをイメージさせることによって、社会人になるための意識や学習意欲の向上を図ります。

 

こうした丁寧な取り組みは、離島における教育の課題の克服につながる可能性があるとして、広く注目されています。現在は年間で約1000人もの視察団が訪れるまでになりました。

 

通信技術の普及によって、以前に比べると受験における地域格差は小さくなったといえるかもしれません。しかし地方と都会で受験生の環境が同等になったとはいえず、いまだに解決しなければいけない課題が残っています。そんな中にあって、ここで紹介した取り組みは新しい可能性を開く大きな希望であるといえるでしょう。

 

受験に限った話ではありませんが、多くの人が地域に目を向け、格差の解消に向けて取り組む必要があります。