埼玉県が実施した「学校選択問題」。制度変更のタイミングでとられた対策とは

埼玉県では平成29年度の公立高等学校入学者選抜から、学力検査の内容を変更しました。

 

これにより、平成29年の3月に実施された試験では、社会と理科の試験の時間が40分から50分に変更になったり、数学と英語の試験では取り組みやすい問題の比率が増えるなどの変化がみられました。

 

さらにこの変更では、レベルが異なる学校の試験でも柔軟に対応できるように「学校選択問題」と呼ばれる学力検査問題を導入しています。

 

平成29年に学校選択問題を導入した高校は20校でした。その中には進学校が多く、それらの学校を志望する受験生は前例がない状況での対策が求められました。

 

学校選択問題が導入された背景とは

埼玉県教育委員会は公式ウェブサイトの中で、学力検査の内容を変更した目的を「受験生1人1人の基礎的な知識及び技能、思考力・判断力・表現力等の能力を、より一層適正に測るため」の改善であると説明しています。

 

改善点の1つである「数学と英語の問題変更」に関しては、従来の学力検査の問題と同じように中学校学習指導要領の内容に沿って出題され、中学校の授業をしっかりと受けていれば解けるような取り組みやすい問題の比率が増えています。

 

以前の試験では「難易度が極端に高い問題が含まれている」ことが課題として指摘されており、受験生が最後まで問題に取り組める内容にすることが大切であるとの考えから、こうした変更が行われました。

 

しかしその一方、試験問題が取り組みやすい内容へと移行することで「数学や英語の得意な受験生では試験結果に差がつきにくくなる」という問題が生じる可能性がありました。

 

この問題への対策として埼玉県では、学校の判断によって、問題の一部に応用的な内容を含んだ学校選択問題を実施できるという選択肢を設けました。

 

制度が変わって初めての受験。サンプル問題が対策のポイント

学校選択問題対策の参考にされたのは、県教育委員会の公式ウェブサイトに公開されたサンプル問題でした。

 

サンプル問題の内容は確かにレベルが高めに設定されているものの、教科書の範囲を押さえておけば対応できるものだと考えられます。県内のさまざまな学習塾では、この内容をふまえて学校選択問題の対策を行いました。

 

学習塾によっては、独自に問題を作成して対応したところもあったようです。その一方で、問題の傾向は以前と大きく変わらないと判断して従来の過去問を活用したり、夏休みまでに基礎固めをした上でさまざまな高校の過去問を解かせたりと、基本を大事にする形で対策を立てた学習塾もみられました。

 

2021年の新大学入試制度の導入に伴って、他の都道府県でも高校入試制度が変わっていく可能性があります。どのように変わるかは地域によって違う可能性もありますが、今回お伝えした埼玉県のケースは、入試に今までと異なる方式が導入される際の参考の1つになるでしょう。