変更目前。固まりつつある大学入試改革の現状とは?

2020年を境に、大学受験の形が大きく変わります。「高大接続改革」と呼ばれる教育改革の取り組みの1つとして、2020年に大学入試センター試験が廃止され、新しく大学入学共通テストが導入されます。

 

文部科学省が公表した共通テスト案に日本私立大学連盟などの高校・大学の関係団体が意見を寄せ、その内容を参考にしながら再検討が行われました。2017年7月13日、文部科学省は公式ウェブサイトの中で「『平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告』を決定した」として、大学入学者選抜改革の内容を公表しました。

 

今回は、固まりつつある大学入試改革に焦点を当て、5月16日に公表された「高大接続改革」の進捗状況の概要と、その後に各団体の意見を反映して変更されたポイントをお伝えします。

 

5月に公表された進捗状況と、指摘された基本方針に関する問題とは?

5月に文部科学省が公表した進捗状況では、新しい共通テスト案である「大学入学共通テスト(仮称)」実施方針の概要が紹介されました。

 

ここで公表された「大学入学共通テスト(仮称)」の大きな特徴は、英語のテストで民間の資格・検定試験が導入されることでしょう。これは、民間試験の結果を活用して、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を総合的に評価することを目的にしています。また、国語と数学の試験で記述式問題を導入し、3~5段階で評価を行うことも検討されています。

 

しかし、これらの基本方針について、日本私立大学連盟が再検討を求める意見書を提出しました。

 

日本私立大学連盟は、問題点の1つとして「英語の民間試験導入で受検機会に格差が生じる」ことを挙げています。基本方針では「高校3年生において2回まで試験結果を大学に送付できる」とされていますが、経済的・地理的な制約が結果を左右する可能性があると懸念したのです。

 

また、国語と数学では記述式によって難易度が上がることが問題視され、受験生の得点が分散されるように作問や評価方法を工夫するように求めています。他には「2020年から英語試験を民間試験に移行させると、高校生や大学、高校の間で混乱が生じる可能性がある」という意見も多く寄せられました。

 

7月に公表された実施方針の確定・変更点は

さまざまな意見を参考にして、7月に新たに公表された実施方針では、以下の点が確定・変更されました。

 

・名称を正式に「大学入学共通テスト」とする。

・2023年度の試験までは、英語の民間試験と並行して、共通テストの英語試験も実施する。

・受験生の負担に配慮するため、民間試験を活用する大学に対しては、なるべく多くの種類の試験を対象にするように求める。

・英語の民間試験を導入し、共通テストの英語試験を行わない大学があることもふまえて、共通テストの検定料については検討を行う。

 

この変更には、5月の実施方針案について指摘された民間試験導入によって生じる格差や、急な移行による混乱の可能性などの問題点の改善が反映されています。

 

低所得世帯に向けた減免などの配慮や、共通テストの英語の試験を受けない場合の検定料割引制度など、大学入学共通テストには検討しなければいけない課題がまだ多く残されています。また、「私立大学にとって一律に義務化されるのはマイナスであり、ある程度自由度がある方が望ましい」などの声もあり、さらなる変更が加わる可能性も否定できません。

 

それでも、実施方針が明らかになってきたことで、大学入学共通テストの対策が立てやすくなってきました。2020年度以降に大学を受験する予定の人は、大学入学共通テストの概要を意識して将来に備えましょう。