全県一区制が受験に及ぼす影響は?

岐阜県は平成30年度から、全日制普通科の県立高校を対象に「全県一区制」を導入します。全県一区制はすでに24の都道府県で導入されており、受験の傾向が変化していると報告されています。導入後は岐阜県も同様の傾向になる可能性が高く、この先、全県一区制を導入するかもしれない他の都道府県も、その時の参考という意味で、影響を把握することは大切です。

 

今回は岐阜県が導入する全県一区制の概要をお伝えします。さらに具体的な事例として、滋賀県が全県一区制の導入から10年を機に行った調査結果を紹介し、どのような影響がみられたかをお伝えします。

 

平成30年度から導入。岐阜県が始める全県一区化の内容は?

全県一区化の対象となるのは、岐阜県の全日制の学年制普通科です。専門学科、総合学科、単位制普通科の高校はすでに県内全域から受験できるようになっていましたが、これで県内のすべての高校が県内全域から受験できるようになります。また、加納(音楽)、不破(スポーツチャンバラ)、海津明誠(ヨット)など、特色ある教育内容や部活動を実施している11の高校では、県外からの募集枠を設けます。

 

学年制普通科の高校を全県一区制にした理由について、岐阜県教育委員会は公式ウェブサイトの中で「中学生の皆さんが県内どこに住んでいても、すべての高校を選択できるようにするためです。近年、スーパーグローバルハイスクールの指定を受けるなど、特色ある教育活動を進める学年制普通科の高校が増え、そうした魅力ある高校への入学の機会を県内すべての中学生の皆さんに均等に広げます」と説明しています。

 

平成30年度からはこれらの他にも、岐阜高等学校が単位制による普通化になったり、各務原高等学校の理数科と英語科の募集を停止して普通科のみでの募集になるなど、県内の4つの高校で改変が行われます。

 

全県一区化から10年。滋賀県でみられた傾向の変化とは

滋賀県は平成18年度入学者選抜から、普通科高校の通学区域全県一区制度を導入しました。制度導入から10年が経過した平成28年度、滋賀県教育委員会はその成果と課題を明らかにするために制度の検証を行っています。

 

調査では制度導入前後の進学状況データの整理に加え、高校選択に関して、これから進路を考える中学生、受験を終えている高校生、およびそれぞれの保護者を対象としたアンケート調査を実施しました。また、数値データだけでは測れない部分について、各市町の状況や学校の取組情報を把握するため、市町長、市町教育委員会教育長、県立高校長等、関係者からの聞き取りも幅広く実施しました。

 

検証した結果をまとめたところ、新たに通学可能となった高校へは普通科進学者の5%~8%が進学しており、制度導入の狙いである自分にあった主体的な高校選択が進んでいたものの、旧通学区域内にある高校への進学割合が依然として7割~8割程度を占め、区域外の進学は各市町村の隣接地域にある高校が主で、過度の集中はみられなかったといいます。

アンケートの結果で、中学生、高校生とその保護者のアンケートの回答では、9割以上が全県一区制度を肯定する一方、「南部に人気が集中し北部の高校に活気がなくなる」「自由に選択できる点は良いが一部の学校の倍率が高くなりすぎ競争が激化している」という意見や、人口減少や若者流出等に向き合っている市町からの「相当数の生徒が市外の進学伝統校に流出し市内の高校教育が地盤沈下する」「市外からの進学者が少なく市内の高校が定員に満たない」「若者の転出超過が続いており市内で働く人材を育てる必要がある」「地域の活性化のために地元にある高校との連携を望む」といった声があったそうです。

 

滋賀県教育委員会は報告書の中で「アンケートの結果や聞き取り内容については、高校教育に対する多様なニーズや期待の現れと認識しています」と述べています。この結果を受ける形で「今後、具体策を検討し、必要に応じて市町と連携を図りながら、すべての高校においてさらに魅力ある学校づくりを進めていきます」と述べ、制度を継続するとしています。

 

全県一区化を導入した他の都道府県でも、受験生の選択の幅が広がった一方で、特定の地域の人気が上昇したことが報告されています。こうした例から、岐阜県でも地域によっては同様の影響がみられる可能性があります。選択肢が広がったぶん、受験生は入念に志望校を調べ、自分の素質や可能性がより高められる高校を決めることが大切になります。