歴史の授業内容が変わる?進む歴史系用語精選の動きとは

高校と大学の教員からなる「高大連携歴史教育研究会」が、高校の歴史の教科書や試験問題の対象になる用語の精選案を公表しました。長年、高校の世界史・日本史教育では歴史的思考力の育成の重要性が指摘されてきたものの、歴史系科目が「暗記科目」だという考えが生徒をはじめ多くの人に定着していることが、この提案が行われた一因です。

 

高大連携歴史教育研究会が公表した第一次の精選の提案では、用語全体の半分近くにもおよぶ大幅な削減や置き換えの案が示されました。このような形で用語が絞り込まれた際には、歴史の授業の内容が変わる可能性があります。

 

歴史系用語精選が提案された理由とは

歴史系科目が暗記科目とされる傾向が強くなった一因には、教科書に収録されている固有名詞や年号などの用語の多さがあると考えられています。高大連携歴史教育研究会が公表した資料によると、ある調査によれば、1950年代に歴史系教科書に収録された用語数は1,300~1,600語でしたが、2000年代には世界史Bと日本史で共に3,400~3,800語となっているとのことで、3倍近くになっています。

このように用語数が増大した原因は「新しい研究成果を取り入れるためという面だけでなく、大学入試で教科書に出ていない細かい事実を問うような問題が出されると、その事項が次の改訂の際に教科書に収録される傾向が続いているから」だといいます。

 

こうした原因から、高校の授業では、歴史的思考力を育成して生徒に歴史を学ぶ楽しさを実感させられる授業を行う余裕がない状況が続いていました。また、大学入試では一部で思考力・表現力を問う記述式などの出題が増えてきたものの、用語の暗記力を問う問題は出題され続けています。

 

この現状を改善しなければ、歴史的思考力を育成する授業を大幅に増やすことは難しいと考えられています。こうした事情が、今回の歴史系用語の精選につながりました。

 

進む歴史系用語精選の動き

2022年に施行が予定されている次期の高校学習指導要領では、新必修科目の「歴史総合」と選択科目の「日本史探究」「世界史探究」への移行が予定されているため、高大連携歴史教育研究会が精選した用語リストに基づく教科書の編纂はできないでしょう。しかし、2020年度には大学入試センター試験に代わる「大学入学共通テスト」が現在の科目のままスタートすることを受けて、世界史Bと日本史Bの用語精選への取り組みが開始されました。

 

高大連携歴史教育研究会は2017年10月に「高等学校教科書および大学入試における歴史系用語精選の提案(第一次)」を公表し、その中で世界史・日本史の様々な部分に関連する歴史の基礎概念が192語、世界史用語1,643語、日本史用語1,664語を精選する第一次案を公開しました。その上で2018年2月末までにアンケート調査を行い、その結果に基づいて用語精選の最終案を検討する予定です。

 

今回お伝えした歴史系用語精選の取り組みは、暗記に重点が置かれる傾向が強かった従来の授業や入試から、より思考力を重要視する流れの中で実施されたものです。2020年度の新テストに備えて、これからの情報に注目しつつ、考えることに重点を置いた歴史科目の学習を行いましょう。