返還の必要がない奨学金「給付奨学金」とは?

独立行政法人日本学生支援機構は、平成29年度から、経済的理由で進学を断念せざるを得ない人の進学を後押しする目的で、「給付奨学金」という返還義務のない奨学金制度を創設しました。経済的な負担を心配している受験生にとって魅力的な奨学金制度ですが、応募対象者には基準があり、採用された場合でも進学先や通学条件に応じて給付される金額が変わります。

 

平成29年度には、4月から8月にかけて大学等に進学した人の募集と、各大学等からの推薦受付が行われました。また、本格実施分として、平成30年度進学者を対象とした申込み受付も実施されました。

 

ここでは本格実施分の給付奨学金制度の内容や、10月に公表された平成29年度の採用状況といった情報をお伝えします。利用を検討するために、まずはこの制度の概要を把握しましょう。

 

経済状況が厳しい学生を支援する給付奨学金

日本学生支援機構の公式ウェブサイトでは、新たに給付奨学金制度を設けた理由を「高等学校等において優れた生徒であって、大学等への進学の目的及び意志が明確であるにもかかわらず、経済的理由により進学が困難な生徒に対して、返還の必要のない給付奨学金を交付することにより、大学等への進学を後押しすること」と説明しています。

 

平成30年度進学者を対象にした給付奨学金の情報によると、募集対象者は平成30年度に大学(学部)、短期大学、専修学校(専門課程)に進学を予定している人、および高等専門学校3年次から4年次に進級する予定の人の中で「住民税非課税世帯(市町村民税所得割額が0円)の人、又は生活保護受給世帯の人」「社会的養護を必要とする人」と定められています。この条件に該当する具体的な基準は、日本学生支援機構が提示するガイドラインを踏まえて、各高等学校等が定めることになっています。このガイドラインは、機構の公式ウェブサイトで閲覧できます。

 

給付が認められると、毎月1回奨学金が振り込まれます。国公立に進学する場合の金額は自宅通学で毎月2万円、自宅外通学で毎月3万円です。私立に進学する場合は、自宅通学で毎月3万円、自宅外通学で毎月4万円です。

 

給付奨学金の申込みは高等学校等で

平成29年度の募集では、大学等の推薦を受けた2,630人のうち、要件を満たすことが確認できた2,502人が採用されました。この募集は国公立の大学等に通う人や自宅から通学する人は対象にならない(社会的養護を必要とする人は除く)など、本格実施となる平成30年度の採用とは違う条件で行われました。

 

平成30年度の採用では、進学前に採用候補者を決定する予約採用という形で、高等学校等の奨学金窓口を通して申込みが行われました。申込み手順は、まず高等学校等から必要書類を受け取り、提出期限等を確認します。必要書類を提出した後は、インターネットで手続きをします。その後は、高等学校等からの推薦により機構が審査し、採用候補者を決定するという流れでした。採用候補者となった人には、高等学校等を通じて「採用候補者決定通知」を交付します。

 

給付奨学金を利用すると、経済的な不安を抱えていた人にも進学の道が開けます。進学の意志があるのに、金銭面の事情から前向きになれない人は、給付奨学金の利用を検討してみてはいかがでしょうか。