私立の学校にかかる費用を軽減できる制度、どんなものがある?

受験を控えた子供を持つ保護者の中には、学費負担の大きさが原因で、私立高校に通わせるのは難しいと考えている方もいます。しかし、国や一部の自治体には、私立高校への進学者を対象に教育費用の一部を支援する制度があり、それらを活用すると教育に関する経済的な負担が軽減できます。今回は文部科学省が実施している高等学校等就学支援金制度と、都道府県が実施する例として、東京都と大阪府の制度を紹介します。

 

文部科学省が実施する高等学校等就学支援金制度

文部科学省では、国公私立問わず、高等学校等に通う一定の収入額未満の世帯の生徒に対して、授業料に充てるための高等学校等就学支援金を支給しています。条件に該当する「一定の収入額」の基準として、市町村民税所得割額が30万4,200円未満(例えば両親のうちどちらか一方が働き、高校生一人(16歳以上)、中学生一人の子供がいる世帯では、年収約910万円未満)の世帯が対象とされています。

 

この支援金は生徒や保護者が直接受け取るものではなく、学校法人などの学校設置者が受け取り、授業料と相殺されます。支援を受けるためには、4月の入学時に申請手続きを行い、6~7月頃に届出手続きを行う必要があります。

 

東京都と大阪府が実施する制度とは

東京都では、私立高等学校等に通う生徒の保護者の経済的負担を軽減する目的で、授業料軽減助成金と奨学給付金という、返還の必要がない制度を設けています。

 

授業料軽減助成金は授業料の一部を助成する制度です。軽減額は世帯の状況によって異なり、例えば平成29年度の場合、生活保護受給世帯では年額の軽減額が145,000円、また、世帯人数が3人で申請者1人のみ所得があり(ひとり親家庭又は配偶者の収入が「配偶者控除」の範囲内の所得の世帯)、平成29年度の住民税額が331,800円以下の世帯では、年額の軽減額は323,200円となります。

 

奨学給付金は経費の一部を助成する目的で、対象者に給付金を支給する制度です。平成29年度の場合では、平成26年4月以降入学の生徒の保護者であり、東京都内に居住している方が対象でした。この制度の助成額は世帯の構成員の状況や住民税の扱いによって異なります。例えば生活保護か生業扶助の受給世帯で全日制等の学校に通う場合は、52,600円(年額)が給付されます。また、平成29年度の住民税(年税)額が「非課税」又は「均等割のみ」の世帯で全日制等の学校に通う場合は、138,000円又は84,000円が給付されます。

 

大阪府では、国公立と同様に、大阪府内の私立の高校や高等専修学校についても自由に学校選択ができるように、前の章で紹介した文部科学省の高等学校等就学支援金制度と併せて、私立高等学校等授業料支援補助金を交付しています。この制度を利用した場合の授業料負担の額は年収によって異なり、年収590万円未満の世帯は授業料負担が実質無償、年収590万円以上800万円未満の世帯は授業料負担が20万円です。府内の私立高校に3人以上通わせている世帯では、年収590万円以上800万円未満の世帯の授業料負担が10万円、年収800万円以上910万円未満の世帯の授業料負担が20万円になります。

 

文部科学省の高等学校等就学支援金は全国一律の制度で、日本の高等学校等に在学していると申請できます。また、ここでは東京都と大阪府の例を紹介しましたが、他の自治体でも、私立の高等学校等に進学する人の経済的負担を軽減してくれる制度を設けている可能性があります。子供と一緒に高校を決める際には、どのような制度があるかを調べた上で、進路の状況に応じて利用を検討しましょう。