大学入学共通テストに向けた試行調査の結果を公開。現時点での英語試験の傾向は?

2018年3月14日、大学入試センターが大学入学共通テストの導入に向けた英語の試行調査の結果を公開しました。今回は、この試行調査や目的についてお伝えします。

 

試行調査を通して大学入学共通テストの問題を検証

大学入試センターでは、大学入学共通テストの趣旨を踏まえた問題の構成・内容の工夫・改善や採点方法等について試行し検証を行うための試行調査(プレテスト)を実施しています。試行調査は、高校と大学とが連携して一体的に改善を図ることが課題とされてきた高大接続改革に位置づけられ、高校あるいは大学において「何をどのように学び、何ができるようになるのか」を明確にしながら、それぞれの教育の充実を図るとともに、入学者選抜を通じてどのような形で学習の成果を評価するのかも明確にし、高校と大学の学びをより効果的に接続することが目指されています。

 

英語教育に関しては、小・中・高等学校を通じて「聞くこと」「読むこと」「話すこと」「書くこと」を総合的に育成することを目的とした取り組みが進められています。しかし高等学校では特に「話すこと」「書くこと」などの言語活動が十分に行われておらず、また生徒が習得した知識や経験が、コミュニケーションなどの場面で適切に表現されているかといった点で課題があり、言語活動の改善と充実が目標とされています。この方向性を踏まえて、4技能をバランスよく評価するために「大学入試英語成績提供システム」に参加する資格・検定試験を活用すると共に、2023年度までは大学入試センターが作問する試験のいずれか、又は双方を選択利用できるように検討が進められています。この試行調査は、センターが作問する試験の出題内容や配点等のバランスについて必要な検証を行うために実施されました。

 

有識者のコメントが示す試行調査の評価とは

この試行調査については、有識者がコメントしています。

 

上智大学特別招聘教授や言語教育研究センター長などを務める吉田研作氏は「全体として、今回の英語は非常に良く出来ていると思う」と試行調査の内容を高く評価しています。中でもリーディングでは純粋に読解力を、またリスニングでは純粋に聴解力を測るものになっている点を、評価のポイントとして挙げています。

 

立教大学グローバル教育センター長、中央教育審議会教育課程部会外国語ワーキンググループ主査代理を務める松本茂氏は「共通テストと民間の英語四技能試験の両方を受けることを踏まえ、共通テストでは『聞く力』『読む力』の二技能に焦点を当てることになったことが大きな特徴の一つである」と述べた上で、「これまで出題されていた『話す力』『書く力』を間接的に測っているとされた問題(発音、アクセント、語句整序など)を排除できたこと」ことを総合的に評価しています。技能別では「聞く」技能に関しては「複数の情報を聞いて判断する問題など『判断力』を問う問題が新たに加わった」「大学に置いて英語で行われる専門科目の授業が増えつつある中、高大接続を視野に入れた問題が配置されている」と、「読む」技能については「必要な情報を理解・整理する力や話の流れをつかむ力を測る問いが出題されており、『使える力』を測っている」「今まで以上に総語数の多い英文も出題され、英文を読んで英語で要約できるかどうかという問題も配置されており」と、コメントの中で評価のポイントを述べています。

 

東京学芸大学教育学部教授で、NHKの英語番組の監修と講師を務める高山芳樹氏は「あたかも自分がその場で英語を使ったコミュニケーション活動をしているような感覚を持ちながら取り組むことができました」などと評価していますが、リスニングについて「時間の長さは妥当なのか、問いで示されている指示が十分理解されるのかが気になりました」と、今後の検証が求められるポイントも指摘しています。

 

今回お伝えした有識者のコメントの詳細、さらに試行調査の問題のねらいや実施状況といった具体的な情報は、大学入試センターの公式ウェブサイトに掲載されています。ただし、この試行調査で出題された問題はあくまでも検証のために行われたもので、今回の問題構成や内容が2020年度からの大学入学共通テストに引き継がれるわけではありません。しかし、この結果を検証して改めて問題構成や内容の検討が行われ、2018年11月に大学を会場にした試行調査を実施、状況に応じて2019年度に確認テストを実施し、その後大学入学共通テストを実施する予定です。