科学技術分野の向上につながる教育「STEM教育」とは?

「STEM教育」と呼ばれる教育が注目されつつあります。2020年度以降に実施される新しい学習指導要領には、プログラミング教育を学習に取り入れることが盛り込まれ、この分野が重要視されていることがうかがえます。STEM教育はプログラミングを科学技術に応用する力を育むことが目的で、その分野に適応した人材の育成に有効だと考えられています。今回はSTEM教育の内容を紹介し、具体的な取り組みの例として、埼玉大学にあるSTEM教育研究センターの活動を紹介します。

 

米国で誕生、日本でも普及が進むSTEM教育

STEMの名称は、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字からきています。提唱した米国では、これらの要素を基礎に広がる科学技術分野に適応できる人材を育てる教育として、積極的に取り入れられています。日本では米国ほどSTEM教育が進んでいるとは言えませんが、文部科学省が先進的な理数系教育を行うSSH(スーパーサイエンスハイスクール)の指定を行ったり、科学技術振興機構が科学技術の分野で国際的に活躍できる人材を育成できるグローバルサイエンスキャンパスの公募を行うなど、これからの科学技術の発展を目指した取り組みが進められています。こうした状況の中、2017年には日本STEM教育学会が発足するなど、国内でもSTEM教育の普及に向けた動きが進んでいます。

 

すでに実施されているSTEM教育の取り組みの例

埼玉大学には、現在の日本では数少ないSTEM教育を研究する施設である「STEM教育研究センター」が存在します。この施設では、教育方法や指導者育成の専門家が中心となり、周辺地域をはじめとする多くの教育現場や外部の共同研究機関と連携して、従来教育のとらえ直しによるSTEM教育の体系化や、STEM教育の指導に関する研究などを行っています。

 

これまではレスキューロボット製作を通した科学技術と人間の生活に関する総合学習や、理科や算数とものづくりを融合する教科連携学習に関する研究、子ども達とのストップモーションアニメづくりやロボットコンテストを通じた指導の研究、連携する国内外の研究機関と合同で「STEM Conference」という国際会議の開催など、多岐にわたる活動を展開しています。これら多くの活動を通して、STEM教育の推進や指導者の育成、研究コミュニティの形成を進めています。

 

日本では近年になって特に知名度が増したSTEM教育ですが、科学技術分野の人材を育成する教育として期待されています。今後ますます必要とされる分野ということで、注目しておきたいところです。