OECDなども注目。埼玉県が独自に進める学力・学習状況調査とは

埼玉県では、「埼玉県学力・学習状況調査」という調査を独自に実施しています。この調査はOECD(経済協力開発機構)などからも注目されており、関心のある自治体や企業などによるコンソーシアムも立ち上がりました。

 

この調査が注目される理由には、今までの「学習した内容がしっかりと身に付いているのか」という視点に「一人一人の学力がどれだけ伸びているのか」という視点が加わったことが影響しています。今回は、この調査の内容や平成29年度の分析結果を通して、この調査の特徴を紹介します。

 

子供が成長を実感できる学力・学習状況調査

埼玉県の学力・学習状況調査の内容は、大きく「ペーパーテスト(教科に関する調査)」と「アンケート(子供たちへの質問紙調査)」の2つです。

 

全国学力・学習状況調査や市町村独自の学力テストの多くは、正答率から学力を表します。この方法はある調査年度の中で子供の学力の現状を調べる場合には適していますが、異なる実施年度の調査結果の比較が難しいという課題があります。例えば、小学校4年生の学力テストの正答率が70%で、小学校5年生の学力テストの正答率も70%だった場合、数字だけでは学力が同じということになってしまいます。しかし、4年生と5年生では難易度に差があるので、同じ数字だからといって学力が変化していないわけではありません。

 

埼玉県学力・学習状況調査はこの点を考慮して「一つ一つの問題について難易度が設定されている」「様々な難易度の問題を多く出題し、それに対する正答や誤答の状況を見ることで、学力を判断する」「教科に関する調査ペーパーテスト全体の正答や誤答の組み合わせに着目し、子供が個々の問題に安定的に正答できる力があるかどうかを判断する」などといった観点で問題作成や評価を行い、子供たちの学力が伸びていく様子を明確に示す調査を実施しています。

 

平成29年度調査の分析でわかったこととは?

平成29年度の4月に実施された調査では、主体的・対話的で深い学びが子供たちの学力に与える影響について、通塾の有無にわけて分析しました。その結果、中学1年生までの子供の学力に対する主体的・対話的で深い学びの影響は、通塾の有無で大きな差は生じていませんでした。しかし中学2・3年生の子供の場合は、通塾していない子の方が主体的・対話的で深い学びの影響が大きいことが示されました。

 

また、下位25%に属していた子供たちが、次年度に下位25%を脱しているかどうかも調べました。その結果、算数・数学では学年が上がるにつれて下位25%を脱しにくくなることがわかりました。これは、算数・数学は学年が上がるにつれて前年度の学力から受ける影響が大きくなるためだと考えられ、この分析を受けて、低学年(早い段階)でのつまずきを残さないことが重要だと指摘されています。

 

このように、埼玉県は調査結果の比較や分析を行い、子供が現在の学力を知り、成長を実感できるように活用しています。埼玉県教育委員会の公式ウェブサイトで公開されている保護者用リーフレットには、調査結果を活かして子供の学力を伸ばす取り組みの内容が紹介されています。効果的な家庭学習につながるポイントが書かれているので、子供の勉強の参考にしましょう。