専門職大学の印象を示す調査結果が公表。具体的に把握していない教員も多数

高度な実践力と、新たなモノやサービスを創り出せる創造力を有する人材の育成強化を行うため、文部科学省は2019年度から実践的な職業教育に重点を置いた「専門職大学等」を制度化します。新たな選択肢となる専門職大学等の制度化ですが、さんぽうが発表した「専門職大学に関するアンケート調査報告書」では、進路指導を行う教員の中でも、十分に理解していない人の割合が高いことが示されました。今回はこの調査結果を中心に、制度化が近づく専門職大学について紹介します。

 

700以上のアンケート結果から専門職大学の印象を調査

文部科学省の公式ウェブサイトでは、専門職大学の内容を「その専門性が求められる職業に就いている者、当該職業に関連する事業を行う者その他の関係者の協力を得て、教育課程を編成、実施することになっており、産業界等と連携した教育を実施することが義務付けられます」「卒業単位のおおむね3~4割程度以上を実習等の科目とするとともに、適切な指導体制が確保された企業内実習等を、2年間で10単位以上、4年間で20単位以上履修することとしています」と説明しています。4年制課程の専門職大学の他に、2年制又は3年制課程の専門職短期大学があります。

 

さんぽうの教育マーケティングセンターは、専門職大学・専門職短期大学について、高等学校の進路指導現場における期待度や懸念点を明らかにするためにアンケート調査を実施しました。5,076校の高等学校進路指導部にアンケートを配布し、2018年4月7日から5月11日の間に741校から得られた回答を集計しました。この調査は2016年6月にも行われており、この時の結果との比較も行われました。

 

情報提供の必要性が浮き彫りに。アンケートが示す印象とは

アンケートでは最初に「『専門職大学』の創設をどの程度ご存知ですか」という質問が行われました。その中で「良く知っている」と回答した人の割合は2.4%、「概ね知っている」と回答した人の割合は41.1%でした。2016年調査では「良く知っている」が0.6%、「概ね知っている」が24.4%だったことと比べると、専門職大学の認知度は明らかに上昇しています。しかし「名前だけは知っている」という回答は48.8%、「全く知らない」という回答は7.6%で、未だに十分に認知していない人が半数以上を占めていることもわかりました。

 

さらに、専門職大学の制度化に期待するかどうかの質問では「大いに期待する」が1.4%、「期待する」が19.0%、「分からない」が63.3%、「あまり期待しない」が13.5%、「期待しない」が2.9%という結果で、制度の内容が認知されていない現状を反映しています。「制度化に期待する」という回答と「制度化に期待しない」という回答では、それぞれ次の理由が挙がっています。

 

・制度化に期待する理由(記述回答抜粋)

学士が得られるのが大きい。

技術職的なもので大学となることで生徒の選択肢が増える。

専門学校との差別化を図ることで、進路選択の幅が広がるため。

最先端分野、大学にない分野で活躍する人材育成。

 

・制度化に期待しない理由(記述回答抜粋)

大学は学問の場所。資格のためではない

大学との違いが良く分からない。子どもの数が減っているのに学校が多すぎる。

専門学校との違いがわからない。結局あまり広がらないのではないか

大学や専門学校で十分だと思っているから。

 

今回のアンケートでは期待する意見がみられる一方で、「制度化の意義がわからない」「大学・短期大学、専門学校の違いが分からない」という意見も多くみられました。この結果を受けて、調査報告書では「文部科学省や関係機関は高校教育現場で不足していると考えられる情報を意識した広報活動が求められます」と指摘しています。

専門職大学は、就職に重点を置いた新しい制度です。就職を意識して進路を考えている人は、文部科学省のウェブサイトなどを通して制度の内容を理解して、大学進学の選択肢に加えましょう。