文部科学省が進める「先導的な教育体制構築事業」の目的とは?

 

文部科学省では、学校間や学校・家庭の連携による新しい学びの推進を目的に、指導方法の開発、教材や指導実践例等の共有などを進める「先導的な教育体制構築事業」という取り組みを行っています。文部科学省のウェブサイトには実践事例を紹介したパンフレットが掲載されており、家庭や学校でICTがどのように活用されているのかを知る参考になります。ここでは、この事業の概要と、具体例として、パンフレットに掲載されている「文字の式」という、中学1年の数学で用いられた取り組みの内容を紹介します。

 

先導的な教育体制構築事業の概要

文部科学省は、この事業の内容を「クラウド・コンピューティング技術など最先端の情報通信技術を活用し、異なる学校間及び学校と家庭との連携を深め、新しい学びを推進するための指導方法の開発、教材・指導実践事例等の共有など、先導的な教育体制の構築に資する研究を実施する」と説明しています。平成26年度にこの事業に係る取り組みの提案の公募が行われ、福島県新地町と東京都荒川区と佐賀県の3地域から4校ずつ、合計で12校が実証地域候補に選ばれました。また、この事業は総務省が行う「先導的教育システム実証事業」と連携しており、総務省が構築するクラウドシステムを活用することも条件に含まれました。

 

ICT機器を活用した数学の学習の事例

パンフレットに掲載された「文字の式」という事例では、予習動画の視聴による反転授業(教室で行われていた知識の伝達に関する要素をビデオ化し、自宅にて学習し、それまで自宅で宿題を通して行われた知識の咀嚼に関する要素を教室で行う教育形態)を通して課題の解法を理解し、「考える」だけでなく「説明」できるようになることを目標に授業を行いました。

 

方法としては、自宅に持ち帰ったタブレットPCで「X枚のひし形の紙を壁に貼るときに、いくつマグネットが必要か」という課題に取り組み、マグネットの数に関する規則性を見つけ、必要なマグネットの個数を求める方法をマークシートに記入します。授業では家庭学習での解答やアンケート、感想が電子黒板に提示され、数名が課題の考え方を発表します。また、教員はクラウドを通して、授業で共有したい内容をあらかじめ選定できます。

 

その後は配布されたワークシートで個人で課題に取り組んだ上で、タブレットPCのデジタルノートを活用し、グループで互いの考え方を話し合います。この時タブレットPCで作成した発表資料は電子黒板に提示されるので、他のグループの考えを参考にして、多様な意見を確認できます。さらに発展課題として、正六角形の場合に必要なマグネットの数について、文字式とその考え方を説明する課題に取り組みます。

 

文部科学省が公表したパンフレットには、小学6年生の社会や理科に関する取り組みも掲載され、ICTを活用した様々な課題解決の事例が紹介されているので参考にしてみてください。