首相官邸が大学などの高等教育の無償化を含む「人づくり革命」基本構想を公表

2018年6月、首相官邸で行われた「第9回 人生100年時代構想会議」の中で、「人づくり革命 基本構想」がまとめられました。「人づくり革命」とは、日本が健康寿命世界一の長寿社会を迎え人生100年時代に入ることを受けて、全ての人が元気に活躍し続け、安心して暮らせる社会をつくるために人材投資を行おうという取り組みです。まとめられた基本構想には、幼児教育無償化や待機児童問題解消、介護人材確保などとともに、大学などの高等教育無償化が重要な項目に挙げられ、実現に向けた具体的な措置が盛り込まれました。

 

今回は、この基本構想にまとめられた高等教育の無償化や支援、対象者の要件などについてみてみます。

 

基本構想に書かれた高等教育無償化の概要

現在の日本では、経済格差が教育格差につながる傾向があり、これが貧困の連鎖につながると考えられています。この状況を改善するため、人づくり革命では「大学」「短期大学」「高等専門学校」「専門学校」などの高等教育の無償化を実現し、意欲さえあれば希望する大学や専門学校などに進学できる社会を実現することが、重要なテーマの1つとされています。

 

基本構想では、住民税非課税世帯(年収270万円未満)の子供たちに対する授業料の減免措置について、「国立大学の場合はその授業料を免除し、公立大学の場合は、国立大学の授業料を上限として対応を図る」「私立大学の場合は、国立大学の授業料に加え、私立大学の平均授業料と国立大学の授業料の差額の2分の1を加算した額までの対応を図る」とされ、1年生の時は、国立大学の入学金は免除、公立大学でも国立大学の入学金の金額を上限に減免、私立大学は私立大学の入学金の平均額を上限に減免するとされています。

 

また、「年収 300 万円未満の世帯については住民税非課税世帯の子供たちに対する授業料減免及び給付型奨学金の3分の2、年収 300 万円から年収 380 万円未満の世帯については3分の1の額の支援を行い、給付額の段差をなだらかにする」など、住民税非課税世帯に準ずる世帯の子供たちについても、住民税非課税世帯の子供たちに対する支援措置に準じた支援を設けるとしています。

 

学習意欲に着目して支援を判断

基本構想では、支援を決定する際には高等学校在学時の成績だけで否定的な判断をせず、レポートの提出や面談を通じて本人の学習意欲を確認するよう求めています。しかし大学入学後は、1年間に取得が必要な単位数の6割以下の単位数しか取得していない時や、GPA(平均成績)などを用いた客観的指標による成績が下位4分の1に属する時などは、警告を経て支給を打ち切ることも検討するとしています。ただし、警告を連続して受けてしまった場合でも、やむを得ない事情がある場合は特例を設けたり、手続きを経て休学した場合は一端休止した支援を復学の際に再開できるようにするなど、学生の状況に応じた措置を行うことも検討されています。

 

基本構想には給付型奨学金の支給についても措置の内容が記載されており、高等教育無償化とあわせて経済格差がおよぼす教育格差の改善に向けた方策が具体的にまとめられています。こうした取り組みを通じて、教育の機会均等が実現することが期待されます。