全国学力・学習状況調査の結果を反映した授業アイディアが公開

教育政策に関する総合的な調査・研究機関である国立教育政策研究所が平成30年度の「全国学力・学習状況調査 授業アイディア例」を公表しました。この資料は全国学力・学習状況調査の結果を踏まえて、授業の改善・充実を図る際の参考となるよう、授業のアイディアの一例を示したものです。中学生を対象にした資料には、国語と数学で3つずつ、理科で4つの授業アイディア例が掲載されています。今回はこの資料に掲載されているアイディアをいくつか紹介します。

 

中学国語の授業アイディア「目的に応じて説明的な文章を読む」

全国学力・学習状況調査では、目的に応じて説明的な文章を読む際、その内容の一部をとらえることはできるものの、全体の構成や展開を踏まえ、必要かつ十分な内容をとらえることに課題がみられました。この点を改善するため、平成 23年度全国学力・学習状況調査の中学国語B2で使用した「古生物学におけるネズミ」を読み、必要な内容をとらえる学習が提案されました。

 

問題文について、「動物の歯の化石を比較することでどのようなことが分かるか」「ネズミ類の歯の化石はどのようにして発掘するか」などという二つの問いを与え、「一つめの問いを把握する」「問いの答えを見付けるための手掛かりになる箇所に印を付けながら、各自で文章を読む」「見付けた答えを書くとともに、どのようにしてその答えにたどり着いたのかを書く」「書いた内容について、グループで検討する」というステップを経て、答えを文章中から見つけ出します。示された複数の答えを考えたり、どのようにしてその答えにたどり着いたのかを考えたりすることを通して、必要な内容を過不足なくとらえる力を身につけることを目指します。

 

中学数学の授業アイディア「3つの計算の計算結果について成り立つことは何だろう」

数に関する事象について考察する場面では、生徒自らが帰納的に調べることで成り立つ事柄を予想して、演繹的に推論して事柄が成り立つ理由を数学的に説明することが大切です。しかし全国学力・学習状況調査では、事柄が成り立つ理由を数学的に表現することに課題がみられました。そこで、3つの計算の順序にしたがっていろいろな数を使って計算結果が何の倍数になるか を予想し、予想が正しいことを構想を立てて文字式を用いて説明することができるようにする指導事例が考案されました。

 

このアイディアでは、はじめに決めた数字から4を引き、それに3をかけ、はじめに決めた数を足した計算結果が4の倍数になる点に着目します。まずはいくつかの整数をはじめの数にあてはめて計算し、その計算結果から4の倍数になることを予想します。さらに、計算結果が4の倍数になることを、はじめの数をnとして、文字を用いた式で考えます。

上記の式は

 

(n-4)×3+n

 

と表せます。この式は

 

4×(n-3)

 

と変形できるため、計算結果が4の倍数になると説明できます。

 

次に、この3つの計算の順番を自分で入れ替え、その順番で計算した時の結果を調べます。この場合でも、まずはいくつかの整数を入れて自分で予想し、次に文字を使って予想したことを確かめるのがポイントです。

 

中学理科の授業アイディア「イオンの知識・技能を活用して、光合成を考えよう」

中学理科の学力・学習状況調査の結果では、分野や領域を横断して知識・技能を活用することに課題がみられました。科学的な概念の形成及び自然の事物・現象を科学的に探究する力の育成を図るため、3年生のイオンの知識・技能を活用して1年生の光合成を考える指導事例が紹介されました。

 

二酸化炭素を溶かしたBTB溶液と水草を使って光合成の働きを調べる実験があり、イオンの知識を活用して光合成とイオンの関係について考えることができます。「分野や領域を横断する課題を把握して、解決に必要な知識・技能に気付くとともに、探究への意欲をもつ」「課題解決に必要な、光合成とBTB 溶液の色の学習を振り返る」「課題解決に必要な、水素イオンと BTB溶液の色の学習を振り返る」「水素イオンの増減と光合成の働きとを関連付けて考察し、事物・現象の理解を深めたり、考えを広げたりする」という流れを通して、分野や領域を横断して、繰り返し知識・技能を活用し、基本的な概念の形成を図り、自然の事物・現象を科学的に探究する力を育成します。

 

「全国学力・学習状況調査 授業アイディア例」は学校や教育機関などに配布されているほか、国立教育政策研究所の公式ウェブサイトにも掲載されています。授業アイディアを通して課題の解決につながるポイントが紹介されているので、学習の参考にしましょう。