文部科学省が審査結果を公表。専門職大学等に求められる条件とは

平成30年10月、文部科学省が「専門職大学等の審査結果について」を発表し、平成31年度開設予定の案件として申請があった17件の諮問の内容を公開しました。「専門職大学を設置するもの」とされた学校が1校、審査継続(保留)が2校、申請の取下げが14校でした。文部科学省はその中で「大学のうち、深く専門の学芸を教授研究し、専門性が求められる職業を担うための実践的かつ応用的な能力を展開させることを目的とする新たな高等教育機関」と専門職大学の目的を述べた上で、今回の結果に至った理由を説明しています。

今回はこの審査結果を通して、専門職大学の特徴を紹介します。さらに具体例として「専門職大学を設置するもの」として判定された高知リハビリテーション専門職大学の特徴を紹介します。

 

専門職大学を設置するために必要な条件

専門職大学は、今後の成長分野を見据え、新たに養成すべき専門職業人材(「理論にも裏付けられた高度な実践力を強みとして、専門業務を牽引できる人材」かつ「変化に対応して、新たなモノやサービスを創り出すことができる人材」)を育成するために平成31年度から創設される、大学制度に位置づけられた専門職業人の養成を行う学校です。

 

専門職大学の設置を審査するにあたっては、各申請案件について、専門職大学設置基準等の関係法令に適合し、優れた専門技能等を持って新たな価値を創造することができる専門職業人材の養成が行える設置計画となっているかどうかが審査されました。具体的には、専門職大学等で養成する人材像が専攻する職業分野における社会の変化や今後求められる能力を踏まえて設定されているか、それを実現する体系的な教育課程の編成、優れた実務家教員の積極的任用と長期の企業内実習(臨地実務実習)を含めた実習の強化、産業界と連携した教育課程の開発等が適切に行われているかなどが審査されました。

 

しかし諮問された多くの申請案件では「専門職大学の特色である実習の内容、評価基準、実施体制が十分検討されていない」「実践的かつ創造的な専門職業人材の専門性の支えとなるべき理論の教育が不足しているなど大学教育としての内容・体系性が不十分」などのさまざまな課題や、「申請に必要な書類が十分作成されていない」「審査意見に対して適切に対応がなされない」などの状況が多くみられ、大学設置に取り組む体制が不十分とされました。

 

専門職大学として開学予定の高知リハビリテーション専門職大学

2019年4月に開学予定の高知リハビリテーション専門職大学は、高知県で約50年前からセラピストを養成し続けてきた高知リハビリテーション学院を前身に、「リハビリテーションに関する高度で専門的な知識と技能を修得した、至誠心に富み、信頼される理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を育成する」を理念に、問題解決に向けた科学的思考能力と主体的学修能力を備えたリハビリテーション専門職の人材を育成する学校です。

 

申請があった17件で唯一「専門職大学を設置するもの」とされましたが、文部科学省が公開する資料には「設置の趣旨・目的等が生かされるよう、設置計画を確実に履行すること」などの遵守事項や、「本学は各専任教員の研究室が個別に整備される計画であるが、今後も教員が研究するための実験研究室なども含めた研究環境の充実に努めることが望ましい」などの助言事項が、附帯事項として多く記載されています。

 

文部科学省の「専門職大学等の審査結果について」のページでは「社会のニーズに即応する優れた専門技能と新たな価値を創造することのできる専門職業人材を養成するため、設置が認可された際には、設置認可はあくまで出発点であるとの認識のもと、設置計画を確実に履行し、特色ある充実した教育研究活動を展開していくことを強く期待したい」と、専門職大学に求められる役割を述べています。従来の大学や専門学校とは違う形で、今後の社会に役立つ人材を育成する選択肢としての役割が期待されています。