産学連携の本格化を目指す事業の支援対象大学が決定

文部科学省は「オープンイノベーション機構の整備事業」という産学連携を支援する施策を行っており、先ごろその支援対象大学が決定されました。平成30年度の4月から5月にかけて実施された公募で19件の申請があり、審査の結果8校が支援対象大学に採択されています。今回は、この事業が目指す産学連携の形を紹介し、事業の具体例として、採択された1校である早稲田大学の取り組みの概要をお伝えします。

 

大学と企業が組織間で連携する仕組みを

文部科学省が進めるオープンイノベーション機構の整備事業は、企業の事業戦略に深く関わる大型共同研究を推進するため、大学の経営トップによるリーダーシップの下で、プロフェッショナル人材による集中的マネジメント体制を構築し、部局を超えて優れた研究者チームの組織化を図る大学の取り組みを支援する事業です。

 

従来の産学連携では、大学が企業の研究開発部門と連携し、資金の提供などを受け、原材料(技術)を提供する形でした。しかしグローバルでオープンなイノベーションシステムを形成するために、産業界では大学の総合力を活用した多様性ある研究活動の重要性が高まっており、研究開発部門だけでなく、製造部門・事業部門も含めた各階層で、大学との連携を行うニーズが生じていました。こうしたニーズに応えるために大学の体制整備を行うことが、オープンイノベーション機構の整備事業のねらいです。

 

目指すべき産学連携モデルとしては、大学は技術シーズとして異分野融合・大型研究プロジェクト・学内のスター研究者の結集といった活動を展開し、原材料(技術)を連携している企業の研究開発部門に提供します。また、新たな研究成果を製品モジュールとして企業の製造部門に提供したり、成果を元にベンチャー起業してスモールビジネスに着手するなどの取り組みを行います。これらの取り組みを企業の研究開発部門・製造部門・事業部門と連携して行う仕組みを、大学のオープンイノベーション機構と呼びます。

 

早稲田大学が進めるオープンイノベーション機構の形

早稲田大学では、早稲田大学独自の組織である研究院の下に「研究社会実装機構(仮称)」を設けるとともに、クリエイティブ・マネージャーと称する専門家を企業から招へいします。早稲田大学の次代を担う研究者を核に、企業とさまざまなマネジメントモデルで共同研究を進める研究開発プロジェクト「リサーチ・ファクトリー」を定め、各プロジェクトで対企業の研究マネジメントを強化します。さらに、学内の人文社会系教員集団「クリエイティブ・パートナーズ」との連携を通して、より高次の社会実装の共同研究に向けてマーケティングやビジネス創出、環境経済、ビジネス法務などの分野で総合的・多角的に検討します。また、2020年4月竣工予定の新120号館を活用したショールーム企画などを進めるなどの取り組みにより、従来の産学連携のフェーズを引き上げ、企業から事業パートナーとして認められるような水準での共同研究を提案・実施します。

 

こうした動きから、産業界が大学に求めるものや、産学連携に積極的な大学がわかります。