大学同士の国際的な交流を進める「COIL型教育」

学術研究の助成、研究者の養成のための資金の支給、学術に関する国際交流の促進などの事業を行う文部科学省所管の独立行政法人である日本学術振興会は、毎年1回、「大学の世界展開力強化事業」を実施しています。平成30年度には、「COIL型教育を活用した米国等との大学間交流形成支援」として、国際的な交流の活性化を図る取り組みを実践する大学10校を選定しました。今回は選定された大学の事業の概要を通して、COIL型教育の特徴を紹介します。

 

情報通信技術を通じて海外の学生と交流を図るCOIL型教育

COIL型教育のCOILとは、Collaborative(協働・交流)、Online(オンライン)、International(国際)、Learning(学習)の頭文字からきています。ICTツールを活用し、海外の学生と様々な分野のプロジェクトをバーチャルに連携しながら実施することで、国内に居ながら海外大学の学生と協働して学習できることが特徴で、質の高い国際的な教育機会を効率的に多くの学生に提供できます。文部科学省は「オンライン協働事業を通じた日米大学生の交流の活発化について」という資料の中で、「海外大学との連携強化による質の高い教育プログラムの構築・実施」「効率的に多くの学生に国際的な教育機会を提供」「地方大学における国際的協働教育活動の推進によるグローカル人材(グローバルマインドを持ちながら地方創生に貢献できる人材)の輩出」といった効果が期待されるとしています。

 

文部科学省は、グローバルに活躍できる人材育成や、米国人学生の留学先としての日本への関心向上などの目的で、COIL型教育を活用した日米大学生の交流活性化を目指しています。平成30年度の「大学の世界展開力強化事業」には、タイプA「交流推進プログラム」とタイプB「交流推進・プラットフォーム構築プログラム」の2つのタイプがあり、審査の結果、タイプAで9校、タイプBで1校が選定されました。

 

選定された国内3大学合同の取り組みとは

上智大学、お茶の水女子大学、静岡県立大学は「人間の安全保障と多文化共生に係る課題発見型国際協働オンライン学習プログラムの開発」という事業で合同で申請し、タイプAに選定されました。この事業には上記の3大学と、3大学の協定校を中心とした米国の10大学が参加し、派遣学生と受入学生はCOILを活用した留学準備を経て、交換留学や短期プログラム、3大学合同派遣プログラム(派遣学生)、国内インターンシップ(受入学生)などのプログラムを実践した後、COILを活用した留学後のフォローアップを行います。留学生受入プログラムでは、東京の2大学で講義を受けた留学生が静岡県立大学を通じて静岡県内の企業・団体でのインターンシップに参加することで、地域での国際交流と新たな形の産学連携を促進します。また、授業科目へのCOIL導入を促進し、米国の大学とつなぐことで、留学の機会を得にくい学生に米国の学生と学ぶ場を創出します。

(1)学生へのグローバル教育機会の提供、(2)連携大学と地域社会のリソースを活用した多層的な学生交流の推進、(3)国際協働オンライン学習プログラムの第三国への展開を通じた途上国の教育格差是正への貢献、の3つを目標に掲げて活動を展開しています。

 

オンラインの教育手法を活用し、海外大学の学生と交流を図ることで、グローバルに活躍するために大切な主体性やコミュニケーション能力などが身につくと期待されています。COIL型教育を活用した取り組みに注目してみてください。