読書数は前年より低下。調査が示す小学生の読書の現状

全国学校図書館協議会が、2018年11月に「第64回学校読書調査」の結果を公開しました。毎年実施されているこの調査で、小学校、中学、高校すべてにおいて前年よりも読書冊数が低下していることが明らかになりました。

 

また、同年10月にはベネッセ教育総合研究所が、読書が小学生の学力や学びの姿勢にどのような影響を与えているかの調査を公開し、学力の向上などの効果を示す結果が得られました。今回は、これらの調査から小学生の読書の現状をみてみます。

 

小学生の平均読書冊数は減少。不読者は増加

第64回学校読書調査は、2018年6月第1週と第2週に全国の小学生(4~6年生)2,730人と、中学生2,714人、高校生2,976人を対象に行われました。

 

得られた結果のうち、小学生の5月の1ヶ月間の平均読書冊数は9.8冊で、前年の11.1冊よりも低下していました。また、小学生の不読者(5月の1ヶ月間に読んだ本が0冊の児童)の割合は8.1%で、前年の5.6%よりも増加しました。

 

読書は学力の低い子どもたちに大きなプラスの可能性

ベネッセ教育総合研究所は「進研ゼミ」の電子書籍サービス「まなびライブラリー」利用データをもとに、2016年8月から2017年12月にかけてパネルデータが構築できた小学5年生42,696名(調査終了時には小学6年生)を対象に、読書量と学力の変化などに関して調査をしました。

 

対象の子どもを読書量で「多い(10冊以上)」「中くらい(3~9冊)」「少ない(1~2冊)」「読書無し」のグループに分け、このうち「多い」「少ない」「読書無し」のグループで偏差値の変化を比較したところ、「多い」グループは事前の偏差値平均が49.3から事後では51.2に上昇し、「少ない」グループは49.9から50.8に上昇しましたが、「読書無し」のグループは50.2から49.5に低下しました。国語、算数、理科、社会の4教科別に変化を比較しても、「多い」グループが3つの中でもっとも偏差値平均が上昇しており、次に「少ない」グループが上昇しており、「読書無し」グループは4教科すべての偏差値平均が低下していました。

 

さらに、対象の子どもを2016年8月の学力テストの結果をもとに3グループに分け、各学力層で読書の効果が異なるかを調べたところ、学力の低い子どもの方が読書の効果が大きいという結果が得られました。また、電子書籍を利用している子どもによかったと感じることを尋ねた結果、「授業で取り上げられた本を読んだ」「わからないことがあったら自分で調べるようになった」「本について家の人と話した」「友だちに本をすすめることができた」ことなどが上位にあがりました。

 

ベネッセ教育総合研究所はこの調査で「子どもたちは読書を通じて自分が感じたことや疑問を調べたり、誰かと共有するきっかけをつくったりしています。こうした体験は、多様な資質・能力を高めることにつながると考えられます」と、読書に期待される効果を示しています。