近づく大学入学共通テスト。試行調査で正答率が低かった科目や出題とは

2018年の11月に大学入学共通テストの導入に向けた平成30年度試行調査が行われ、この結果を分析し、各教科の平均正答率や、平均正答率が低かった数学2科目と理科3科目(物理・生物・地学)の検証の方向性などの情報が公表されました。ここでは正答率が低かった5科目で出題された記述式以外の問題のうち、正答率がもっとも高かった問題と低かった問題など、平成30年度試行調査の結果が示す傾向をお伝えします。

各教科の平均正答率と留意点

試行調査の各教科の平均正答率は次のとおりでした。

 

・国語 46.92%

・数学Ⅰ・数学A 34.54%

・数学Ⅱ・数学B 44.89%

・世界史B 59.24%

・日本史B 53.58%

・地理B 60.02%

・現代社会 51.82%

・倫理 52.32%

・政治・経済 49.62%

・物理基礎 53.64%

・化学基礎 49.20%

・生物基礎 47.53%

・地学基礎 57.47%

・物理 38.86%

・化学 51.03%

・生物 32.63%

・地学 42.65%

・英語(リーディング) 56.37%

・英語(リスニング) 59.09%

 

これら19科目のうち、数学2科目と理科3科目では、今後の検証の方向性が示されました。数学2科目では試行調査の内容を「数学的な問題発見・解決の全過程を重視して出題したが、それに伴う認知的な負荷がまだ高かったものと考えられる」とし、その上で「知識の理解や思考の過程をより段階的に問うこと、会話文も含めて提示する題材の更なる精選を図ること」などについて検証するといった方向性を示しました。理科3科目では、物理は「第1問の正答率が予想よりも伸びなかった」「当てはまる選択肢を全て選ぶ問題、数値を当てはめる問題といった新しい出題形式も影響した」と、生物と地学については「実験・観察・調査を行い、その結果を基に考察するという学習経験の不足が伺える結果となった」などと分析し、これらの点を考慮して具体的な対応策をまとめる予定です。

 

数学2科目と理科3科目で正答率が高かった問題と低かった問題

数学Ⅰ・数学Aでは、第4問の(2)の1問目が、78.3%ともっとも高い割合を示しました。第4問は天秤ばかりで物体の質量を量ることを通して二元一次不定方程式の整数解について考察する問題で、(2)は与えられた条件の下で一次不定方程式の一組の自然数解を求める内容でした。しかし同じ第4問の最終問題である、前問までの考察を基に、条件を変更した一次不定方程式が0以上の整数解をもたない場合について考察する問題の正答率はもっとも低い1.1%でした。

数学Ⅱ・数学Bでもっとも正答率が高かったのは、学習指導要領では数学Bの「空間座標とベクトル」を扱った第5問の(1)の、空間内に与えられた四つのベクトルを用いて、他のベクトルを表し、ベクトルの内積を求める内容で、97.3%でした。もっとも正答率が低かったのは第3問の、読書時間に関する調査を用いた標本平均・標本比率の分布などについて考える内容で、(2)の「標本平均が与えられた条件となる確率を求める。また、与えられた確率から統計量の分布を考察する」問題の1問目で、正答率は0.2%でした。

物理では、第4問の問1の、エレキギターの弦から生じる波形を基にして、弦をより強くはじいた時の波形を特定する問題の正答率が、85.6%ともっとも高い割合を示しました。逆に正答率がもっとも低かったのは、第1問の問3の断熱素材でできたシリンダー内にピストンで閉じ込められた理想気体から温度変化や気体がされた仕事の理解について考察する問題で、正答率は6.6%でした。

生物で正答率がもっとも高い割合を示したのは、第2問Bの問6の、植物の花芽形成の記録と日長や気温の年間変動のデータから温度の役割を判断する問題で、68.7%でした。もっとも低かったのは第5問Bの問7の生物進化がどのようにして起こるのかについての理解を問う問題で、正答率は6.4%でした。

地学でもっとも正答率が高かったのは学習指導要領の「地球の大気と海洋」に該当する第4問Aの、極向きの水蒸気輸送と偏西風の流れ方に関する特徴を問う問題で、正答率は86.9%でした。学習指導要領の「地球の活動と歴史」(地学基礎の「変動する地球」)に該当する第3問の問4の、地質構造の理解を基に、走行・傾斜の情報から、特定の場所に現れる地層を推定する問題の正答率がもっとも低い9.2%でした。

 

独立行政法人大学入試センターは、ここで紹介した内容を含めた調査結果を基に検証を行い、文部科学省の策定する「大学入学共通テスト実施大綱」を踏まえた問題のねらいや実施方法などの通知を行っていく予定です。