職場体験の最新事情! 職場体験・インターンシップの実施率を発表

学校による職場体験・インターンシップの実施は、将来子どもたちが就く職業の具体的なイメージを得ることができる貴重な機会です。

実際に職場体験はどの位の実施率になっているのでしょうか。2017年度に全国の国公私立中学校・高校が職場体験・インターンシップをどのように実施したか、その報告が2019年3月に国立教育政策研究所から発表されましたので確認していきましょう。

 

公立中学校の職場体験実施状況

公立中学校では、9,449校中9,319校が職場体験を実施しています。前年度(2016年度)より0.5ポイント増の98.6%となっており高い実施率が確認できます。

 

中学校受験者が多くなっている現状を踏まえ、公立中学校に求められることは、等しく子どもたちに将来の指針を示すことでしょう。どの子どもたちも将来の選択肢を見出せるようにするためにも、この公立中学校の職場体験実施率は有用なものであるといえます。

 

全国のうち14県10政令指定都市(宮城県、茨城県、富山県、石川県、福井県、山梨県、静岡県、愛知県、滋賀県、兵庫県、岡山県、愛媛県、熊本県、宮崎県、札幌市、仙台市、川崎市、相模原市、静岡市、名古屋市、神戸市、岡山市、北九州市、熊本市)での職場体験実施率は100%です。

 

その中でも、兵庫県と神戸市では5日間以上の職場体験を行っており、ただレクリエーション的に体験するのではなく「働く」とはどういうことなのかをしっかり感じさせる、実りの大きい職場体験を実施しています。

 

特に兵庫県は、職場体験の先駆けともいえる「トライやる・ウィーク」の実施県でもあり、地域全体で職場体験に協力しようと考える傾向があります。そういった特徴が、県全体で積極的に職業体験へ取り組もうとする姿勢へとつながっているのかもしれません。

 

 

国立中学校の職場体験実施

国立中学校では職場体験の実施率が前年度比2.7ポイント減の61.3%となりました。国立中学校では、多少の増減はありつつも、2013年度以来毎年60%前後の実施率があります。

 

国立中学校では、公立の一般的な中学校と異なる独自の学習カリキュラムが組まれており、座学だけではなくさまざまな体験学習を用いた授業が数多く用意されています。なので、職場体験を行わずとも問題が少ないのです。公立中学校に比べ国立中学校における職場体験の実施率が低いことにはそういった理由があると推測できます。

 

しかし、半数以上の学校は実際に職場体験を実施していることから、職場体験を総合学習の一環として上手く取り入れて活用している背景が浮かび上がります。

 

私立中学校の職場体験実施

私立中学校における職場体験の実施率は前年度比2.5ポイント増の32.9%です。2013年度以降増加の傾向にはありますが、全体の実施率はかなり低くなっています。

 

私立中学校は国立中学校と同様に独自の学習カリキュラムで動いています。総合学習的な部分も充実していますが、一方で公立中学校よりも多くの学習時間が必要となるため、職場体験の実施は難しい傾向にあると推測されます。

 

職場体験を実施することで、将来の子どもたちの選択肢が広がるという側面がある一方で、私立中学校にはこれからの高校・大学受験を見越して進学している生徒が数多くいるため、職場体験に時間を取られるのは非効率的と考える側面もあるのかもしれません。

 

しかし、自分たちの将来の選択肢とは全く異なる部門の職場体験をすることで、社会を見て、経済の流れを把握するきっかけにもなります。その観点で見るならば私立中学校の職場体験実施率が少しずつ上昇していくことが望まれるでしょう。

 

 

公立高校のインターンシップ実施

公立高校(全日制・定時制)においてインターンシップの実施率は、前年度比1.1ポイント増の84.8%となり、概ね実施していることになります。

 

学科別でみると公立高校(全日制)のうち普通科は86.9%で、商業高校などの職業に関する学科は95.5%と、後者の方が10%近く高くなっています。

普通科の生徒は卒業後、大学に進学するケースが多く、彼らにとって就職はまだ先のこととなります。それに対し、職業に関する学科の生徒は卒業後すぐに仕事へ就くこととなります。職業関係学科の生徒にとってインターンシップは、高校卒業後の将来を見据え、今後を考えるための重要な意味を持っているのでしょう。

 

 

今後の職場体験・インターンシップは進学・就職に関わらず実施すべき

中学校・高校卒業後に進学をする生徒も、就職を選ぶ生徒も、いずれは就労することになります。目先の進路に関わらず、将来的にどのような就労を行うのかを生徒たちにイメージさせるために、等しく職場体験を行えるよう学校や地域が協力し合う必要があるでしょう。