2020年度の新学習指導要領スタートを見据え、さまざまな内容を盛り込む

 

文部科学省の柴山昌彦大臣は、新しい時代に対応した教育の在り方について、同省下に設置されている中央教育審議会(渡邉光一郎会長)に諮問しました。

諮問した内容は下記のように、1.新時代に対応した義務教育の在り方、2.新時代に対応した高等学校教育の在り方、3.増加する外国人児童生徒等への教育の在り方、4.これからの時代に応じた教師の在り方や教育環境の整備等の4本柱で、2020年度から順次スタートする新学習指導要領に対応する内容です。

中でも最も注目されているのが小学校における教科担任制の拡大です。教科担任制は、現在でも音楽や理科の一部で行われていますが、来年度から英語やプログラミング教育の授業が正式科目になるのを機に、そうした専門性の高い科目への導入が検討されています。

小学校での教科担任制の拡大についてはメリットとデメリットの指摘があります。教科担任制にすれば教師が専門的な教科内容に対応しやすくなるのはもちろん、担当しない教科の準備が不要になるため、働き方改革の面からも教師の負担を減らすことができます。

半面、学級担任制のメリットである児童一人一人への目配りができなくなるのではないかという懸念も指摘されています。また、児童数の少ない小規模校では教師の確保が難しくなる懸念もあります。そのため、今回の諮問には教員採用の見直しも盛り込まれています。

もうひとつのポイントが高等学校の普通科改革など各学科の在り方です。最近特に高校生の学習時間の減少が顕在化し、中でも高校生の7割が通う普通科では、大学入試に絡まない科目の学習意欲が著しく低下しているといいます。高校2年生以降、理系をまったく学ばない生徒も少なくありません。

そこで、文系・理系にかかわらずさまざまな科目を学ぶことや、STEAM教育の推進なども諮問しています。STEAM教育とは、Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)を統合した教育です。これにより生徒の意欲を引きだすのが狙いです。

教員の働き方についても、義務教育9年間で学級担任制を重視する段階と教科担任制を重視する段階に捉え直すことのできる教職員配置や教員免許制度をはじめ、 教員養成や採用、免許更新講習、研修などについても諮問されています。

 

柴山文部科学大臣が中央教育審議会に諮問した具体的な項目

1.新時代に対応した義務教育の在り方
● 基礎的読解力などの基盤的な学力の確実な定着に向けた方策
● 義務教育9年間を見通した児童生徒の発達の段階に応じた学級担任制と教科担任制の在り方や、習熟度別指導の在り方など今後の指導体制の在り方
● 年間授業時数や標準的な授業時間等の在り方を含む教育課程の在り方
● 障害のある者を含む特別な配慮を要する児童生徒に対する指導および支援の在り方など、児童生徒一人一人の能力、適性等に応じた指導の在り方

2.新時代に対応した高等学校教育の在り方
● 普通科改革など各学科の在り方
● 文系・理系にかかわらずさまざまな科目を学ぶことや、STEAM教育の推進
● 時代の変化・役割の変化に応じた定時制・通信制課程の在り方
● 地域社会や高等教育機関との協働による教育の在り方

3.増加する外国人児童生徒等への教育の在り方
● 外国人児童生徒等の就学機会の確保、教育相談等の包括的支援の在り方
● 公立学校における外国人児童生徒等に対する指導体制の確保
● 日本の生活や文化に関する教育、母語の指導、異文化理解や多文化共生の考え方に基づく教育の在り方

4.これからの時代に応じた教師の在り方や教育環境の整備等
● 児童生徒等に求められる資質・能力を育成することができる教師の在り方
● 義務教育9年間で学級担任制を重視する段階と教科担任制を重視する段階に捉え直すことのできる教職員配置や教員免許制度の在り方
● 教員養成・免許・採用・研修・勤務環境・人事計画等の在り方
● 免許更新講習と研修等の位置付けの在り方など教員免許更新制の実質化
● 多様な背景を持つ人材によって教職員組織を構成できるようにするための免許制度や教員の養成・採用・研修・勤務環境の在り方
● 特別な配慮を要する児童生徒等への指導など、特定の課題に関する教師の専門性向上のための仕組みの構築
● 幼児教育の無償化を踏まえた幼児教育の質の向上
● 義務教育をすべての児童生徒等に実質的に保障するための方策
● いじめの重大事態、虐待事案に適切に対応するための方策
● 学校の小規模化を踏まえた自治体間の連携等を含めた学校運営の在り方
● 教職員や専門的人材の配置、ICT環境や先端技術の活用を含む条件整備の在り方