災害の際の安否確認や護身用としても役立つ

 

小学生から高校生まで、子どもの生活に深く浸透しているスマートフォン。これまでスマホや携帯電話の学校への持ち込みは基本的に禁止されていましたが、それが解禁される見通しになってきました。

東京都教育委員会は、スマホや携帯電話の公立学校への持ち込みを解禁する方針に転換。これまでのように一律に禁止するのではなく「必要に応じて、学習指導や安全確保のために適切に活用できるようにする」と公表しました。

 

先に解禁の方針を打ち出したのは大阪府です。大阪府教育庁は今年3月、これまで禁止していたスマホや携帯電話の学校への持ち込みを転換する「小・中学校における携帯電話の取扱いに関するガイドライン」を府教育委員会に提出。

この中で、登下校中の安全・安心のために、携帯電話の所持を「一部解除」としたほか、「保護者には、子どもに携帯電話を持たせるかどうかの判断、またその管理について責任があります」と明記しました。

府がこれまでの方針を転換した背景には、平成30年6月に起こった大阪府北部地震での経験があります。子どもの安否確認で苦労した保護者から解禁の要望が出されていました。一方、政府も「学校における携帯電話等に関する有識者会議」を設置し、学校での情報通信端末の取扱いについての方針を改めて示す予定です。

 

文科省よりも厳しかった東京都の持ち込み規制

 

そもそも文部科学省は平成21年1月、「学校における携帯電話の取扱い等について」通知し、高等学校では使用制限、小・中学校では原則持ち込み禁止としてきました。

東京都教育委員会も同じ年に「子供の携帯電話の利用に係わる取組について」通知し、都立高等学校、都内公立小・中学校の両方で持ち込みを禁止しています。都立特別支援学校でのみ、生徒の実態に応じて学校が判断するとしていました。

 

今回の方針転換に当たり、東京都は児童・生徒の情報通信端末の利用実態について調査しています。それによると、都立高等学校・中等教育学校後期課程では、生徒のスマホ利用率が97.3%と極めて高いことが分かりました。また、区市町村立小・中学校でも、小学生の63.9%、中学生の77.0%がスマホや携帯電話を利用していました。同時に都立高校に研究指定校を設け、教育活動での情報通信端末の試行・研究なども行っています。

こうした結果を受け、「学校の授業において、スマートフォン等の活用が有効」並びに「登下校時の安全確保や、災害時の安全確保の際に、スマートフォン等の活用が有効」と結論付けています。

 

都立学校では校長が、区市町村立学校では教育委員会が判断

 

今後、平成21年の通知を廃止する一方、都立学校においては社会状況や研究指定校での取組みなどを踏まえ、校内への持込みや使用許可を校長が判断。かつ基本方針を校長が定めたうえで、「SNS学校ルール」を見直すとしています。区市町村立学校でも、各区市町村教育委員会が判断するとしています。

そこで、今後は校長や教育委員会の判断が注目されます。東京都の今回の措置で、学校へのスマホの持ち込みが全面的に解禁されるわけではないことに留意してください。

 

確かにスマホや携帯電話は、地震などの際の安否確認に有効ですし、身を守るツールとしても活用できます。しかし、保護者としては見せたくない情報に簡単にアクセスできたり、SNSなどを通じ事件に巻き込まれたりする危険性があります。

子どもを守るのは保護者の責任です。学校への持ち込みが解禁されたとしても、親子でその使い方を話し合うほか、必要に応じてフィルタリングソフトなどの利用も強くすすめます。子どもにもプライバシーはありますが、放任は避けるべきです。