2020年からの新学習指導要領に向けて全国の公立中高生の英語力を調査

 

文部科学省は、全国の公立小学校、中学校、高等学校を対象に実施した「平成30年度英語教育実施状況調査」の結果をこのほど公表しました。

 

平成29年3月には小学校および中学校の新学習指導要領が、平成30年3月には新高等学校学習指導要領が公示されました。また、平成30年6月に「第3期教育振興基本計画」が閣議決定されたことを踏まえ、現状を把握するとともに英語教育の充実や改善に役立てるために実施したものです。

 

この調査では、2020年度からの新学習指導要領の全面実施に向け、小学校で英語教育の指導体制を、中学校・高等学校で生徒の英語力や言語活動の実施状況などを調査しました。そこで、以下、ポイントとなる部分を見ていきましょう。

 

 

中学校・高等学校ともに大きく伸びる英語力。地域格差の拡大が課題

 

最も興味深い結果だったのは中学生・高校生の英語力です。CEFR A1レベル(英検3級)相当以上を達成している中学生、CEFR A2レベル(英検準2級)相当以上を取得している高校生の割合はともに増加傾向にありました。

 

ちなみにCEFRとは、「外国語の学習・教授・評価のためのヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages)」のことで、ヨーロッパで定められた語学力の国際的な指標です。

 

具体的には、CEFR A1レベル相当以上に達している中学生は、平成25年が32.2%だったのに対し、30年が42.6%と10%以上伸びています。また、CEFR A2レベル相当以上の高校生も平成25年が31.0%だったのに対し、30年が40.2%とこれも10%近い伸びを示しています。ただし、いずれも目標値の50%以上には到達していませんでした。

 

さらに都道府県で格差が大きいことも分かりました。中学校でCEFR A1レベル相当以上の英語力を有する生徒の割合は、政令都市を含んだベスト3では1位さいたま市75.5%、2位福井県で61.2%、3位横浜市55.9%。反対にワースト3は、北海道30.0%、浜松市31.2%、神戸市31.5%でした。

 

関東地方に地域を絞ると、1位のさいたま市に次いで、横浜市55.9%、千葉県52.3%、東京都51.3%、千葉市46.8%、埼玉県45.3%、栃木県43.2%、川崎市42.3%、茨城県41.6%、群馬県40.9%、神奈川県38.1%、相模原市36.4%と、同一県内でも大きな地域格差が見られました。

 

高校性でも同様の結果が出ています。CEFR A2レベル相当以上の英語力を有する生徒の割合は、ベスト3が1位福井県56.0%、2位富山県54.8%、3位秋田県53.3%。また、ワースト3は宮城県31.1%、埼玉県31.8%、奈良県32.1%でした。

 

関東地方に絞ると、神奈川県46.5%、東京都43.4%、茨城県41.1%、千葉県40.9%、群馬県40.3%、栃木県36.4%で、県での格差は約10%も開いていました。

 

 

英語力が伸びるか伸びないかは、学校や教育委員会の取り組み次第

 

一方、中学3年生の英語力の上昇率が高い地域は、さいたま市増加率16.5ポイント、堺市13.0ポイント、岐阜県8.7ポイント、福岡県7.8ポイント、大阪府5.9ポイント。高校3年生では秋田県11.6ポイント、富山県5.7ポイント、東京都5.2ポイント、茨城県4.9ポイント、徳島県4.2ポイントでした。

 

文部科学省はこうした自治体の教育委員会に英語教育に対する取り組みの聞き取り調査を行い、下記のように報告しています。

 

  • 英語教育実施状況調査を基に管轄の自治体においてそれぞれの課題を分析し、指導主事会で課題の要因・改善の仮説を立てることによる、課題改善に向けたピンポイントの取り組みの実施
  • 英語教育改善プランに基づき、教師にパフォーマンステストの活用や英語使用について市町村教育員会をとおして指導
  • 生徒の英語力を評価し、指導改善に生かすために、外部試験を導入
  • CEFRを基にCAN-DOリストを改善し、設定した目標に対応する英語力を具体例をとおして教師間の共通理解を図ることによる、定期試験やパフォーマンステストの改善
  • ALT(外国語を母国語とする指導助手)配置拡大および活用の促進
  • 教師対象に民間機関を活用したスピーキングテストの研修の実施による、パフォーマンステストの内容および機会の充実

 

英語力が伸びるか伸びないかは、生徒の能力ではなく、学校や教育委員会の取り組み次第といえそうです。