今注目の文理融合系学部

近年のグローバル化やICTの急速な進歩を背景に、これからの時代に対応した学部が求められています。各大学ではこれらの社会的ニーズに応える形で「文系」と「理系」という従来の垣根を超えた「文理融合系」の学部を新設する傾向が見られるなど、教育の大きなターニングポイントとなりそうです。

 

文理融合系学部とは?

文理融合とは、従来の教育現場で用いられてきた「文系」「理系」という学問的区分にとらわれることなく、横断的な知識や教養を身につけることを目的とした新しい教育方針を指します。

 

例えば、AIの分野で注目されている「ビッグデータ」を活用しようとしたときには、コンピュータサイエンス(理系)の知識と、人文社会科学(文系)の知識が必要となります。学問分野で区切られている今までの教育のあり方では対応が困難になってきているのです。

 

 

主な文理融合系学部

社会のニーズに呼応して近年増加の傾向にある文理融合系学部ですが、新しい分野ということもあり、

すべての大学が置いているわけではありません。

 

また各大学が特色を打ち出しているため、様々な種類やジャンルが存在する点も文理融合系学部の特徴といえるでしょう。

それゆえ、カテゴリ分けをするのが困難な学部ではありますが、代表的な文理融合系学部を以下にご紹介していきます。

 

 

リベラルアーツ系学部とは?

リベラルアーツとは古代ギリシャ・ローマ時代から存在する学問の考え方で、人文科学・社会科学・自然科学の基礎的知識を横断的に学ぶことを指し、日本では一般に「教養」と訳されます。

 

リベラルアーツ系学部は総合的なものの見方や、柔軟な考え方を育成することを目的としています。古い歴史を持つ学部ですが、その点から見れば、近年新設されている文理融合系学部の源流といえるかもしれません。

 

リベラルアーツ系学部の代表格としては、東京大学や国際基督教大学などに置かれる教養学部や、早稲田大学の国際教養学部などが挙げられます。

これらの学部は、最初に各学問の基礎を幅広く学び、年次が進むにつれて自分の興味に合わせて専門分野を絞っていく形態を取る点が特徴です。

 

 

総合政策学部とは?

総合政策学部は、リベラルアーツ系学部と同様に比較的歴史のある学部です。日本では1990年に慶應義塾大学で初めて設立され、次いで1993年に中央大学にて設立、その後さまざまな大学で置かれるようになりました。

 

総合政策学部は、社会問題を総合的に解決するための方法を研究する学部で、社会科学を基本にしつつも、人文科学・自然科学の分野まで横断的に学ぶのが特徴です。

 

「政策」と聞くと行政の分野を連想しがちですが、総合政策学部が対象とするのは必ずしも国家レベルの政策だけではありません。一般企業はもちろん、国際機関やその他非営利団体などの幅広い分野で活躍できる専門家の養成を目指しています。

 

 

共創学部とは?

共創学部は2018年に九州大学に新設された学部で、従来型の文理融合系学部である教養学部や総合政策学部とは異なり、近年のグローバル社会に対応する形で作られた新しい文理融合系学部です。

 

共創学部は、政治学・言語学・認知科学・地球科学などの幅広い知識を背景に、環境問題や食糧問題、民族や宗教対立、経済格差といった地球規模の問題を解決できる人材の育成に取り組んでいます。

 

「共創」というワードには、他者と協力して共に解決策を創造していくという意味が込められています。そのため、座学にとどまらず、コミュニケーション能力やディスカッション能力の向上にも重きを置いたカリキュラムが用意されているのも特徴です。

 

 

その他の文理融合系学部

九州大学の共創学部のように、今日の社会情勢に対応した新たな学部が続々と誕生しています。

滋賀大学の「データサイエンス学部」や、中央大学の「国際情報学部」、横浜国立大学の「都市科学部」、宮崎大学の「地域資源創成学部」など、各大学でさまざまな特色を持った文理融合系の学部が新設され、学生の選択肢の幅はますます広がっているといえるでしょう。

 

 

文理融合系学部はこんな人におすすめ

文理融合系学部は、幅広い知識をベースにAIの分野やグローバルな場で活躍したい人や、地域社会に貢献したい人などにおすすめの学部です。

 

また、新卒採用をする各企業においても、一つの分野に特化したスペシャリストよりも、幅広い知識と視野を持ち、各分野の専門家の意見をコーディネートすることで課題解決へ導けるゼネラリストを求める傾向が出てきています。

この点からも、文理融合系学部は注目の的であり、その人気はこれからも続いていくことでしょう。