STEM教育は21世紀型の新しい教育システム

AIやロボットが普及する新たな時代を担う人材を育てるべく、世界各国で教育システムの刷新が進められています。そのキーワードとなるのが「STEM教育」です。

 

しかし、STEM教育とはどういった教育なのでしょうか。日本におけるSTEM教育の取り組みの現状、そしてSTEM教育と並んで話題に上がる「STEAM教育」との違いなどについて解説します。

 

 

STEM教育とは?

STEM教育とは「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Mathematics(数学)」の4分野を土台とし、これから訪れる高度なIT社会とグルーバル社会に適応した人材を育成するための新しい教育システムです。

 

STEM教育は、従来のように4分野を縦割り方式で教育し、単に理系に強い人材を育成するだけにとどまりません。4つの領域を横断的に活用し、自ら考えて新たなものを創造できる人材を育成することが目的となっています。

 

 

STEAM教育との違い

STEAM教育は、STEMに「Art(芸術)」を加えたものです。4つの分野を総合的に活用して新たなものを生み出す際には、芸術性や創造性が必要不可欠であるとの考えから、STEM教育に「Art」を付け加えたという経緯があります。

 

あるいはAを「Liberal Arts(教養)」とする見方もありますが、いずれにしても意味合いはほぼ同じです。STEM教育もSTEAM教育も、21世紀型の教育システムということに変わりはありませんので、ここではSTEM教育という表記で統一します。

 

 

STEM教育誕生のきっかけ

今でこそ世界各国で取り組まれているSTEM教育ですが、そのきっかけとなったのはアメリカのオバマ前大統領の演説だと言われています。

演説の中でオバマ氏は、コンピュータ・サイエンス教育は国の未来のために必要であり、ゲームやスマートフォンで遊ぶだけではなく、自らプログラミングして作り出そうと呼びかけたのです。そして、コンピュータ・サイエンスの技術は特定の専門家だけのものではなく、すべての国民にとって必要なものであるとの考えを示しています。

この考え方に多くの人々が賛同し、STEM教育が世界各国に広まることになりました。

 

 

世界各国のSTEM教育の現状

アメリカでは、年間数十億ドルもの予算を投入してSTEM教育を実施しています。STEM教育を実践する学校「High Tech High」では、教科書による授業ではなく、プログラミングや創造性の育成に力を入れたカリキュラムが行われているようです。

 

また、アジア各国でもSTEM教育は盛んです。特にインドやシンガポールでは、早い時期から国を上げてSTEM教育の普及に力を入れており、国営のSTEM教育施設や各種プロジェクトが展開されています。

 

 

日本におけるSTEM教育の取り組み

日本においても、2009年頃から文部科学省を中心に、STEM教育に関する研究や取り組みが進められてきました。

そのひとつが「スーパーサイエンススクール」です。これは文部科学省が指定した、先進的な理数教育や創造性を育む教育を実施している高等学校のことで、現在全国に200校以上あります。

また2020年度の学習指導要領改定に伴い、小学校におけるプログラミング教育の必修化が決まっていますが、これもSTEM教育の一環です。

 

そして埼玉大学には、地域の子どもたちと一緒にロボット作りやプログラミングを行う「STEM教育研究センター」が設置。ものづくりを通じてSTEM教育の普及に取り組んでいます。

 

とはいえ、アメリカや他のアジア諸国と比較すると、日本は出遅れている感があるのは事実です。予算確保を含めた政府主導の対応が待たれます。

 

 

STEM教育は国の未来に直結する課題

戦後は日本の製造業が世界をリードしてきましたが、これからの時代ではAIやロボットといったコンピュータ・サイエンスが国の未来を左右します。

そして、次の時代を担う新たな世代を育成するSTEM教育は、日本の未来に直結する重要課題といっても過言ではありません。今後の日本のSTEM教育への対応に注目していきましょう。