ようやく授業が再開となったが……

新型コロナウイルスの影響で休校となっていた学校が次々と再開されていますが、一学期が短くなってしまったため、勉強の遅れや受験への影響を心配している方も多いのではないでしょうか。

 

今回は、現時点で発表されている文科省の方針や、受験スケジュールの後ろ倒しなど、具体的な影響や対応などについてご紹介します。

 

 

学習の遅れの対応策

文部科学省は、新型コロナウイルスが完全に収束していない現状を踏まえ、引き続き学校に万全の感染症対策を講じることを求めたうえで、「社会全体が、長期間にわたり、この新型コロナウイルス感染症とともに生きていかなければならないという認識に立ちつつ、子どもたちの健やかな学びを保障することとの両立を図っていくことが重要」と語っています。※1

 

当初に予定していた内容の指導を年度中に終えることが難しい場合の対応については、「次年度以降を見通した教育課程編成」と「学校の授業における学習活動の重点化」の2つの対応策を挙げています。

 

 

「次年度以降を見通した教育課程編成

最終学年以外の生徒(小学1~5年、中学1~2年、高校1~2年)について、2021年度または2022年度までの教育課程を見通して検討を行い、場合によっては、次学年または次々学年に移して教育課程を編成し直すとしています。

 

つまり、当初予定されていた学習指導が今年度に終わらない場合には、次年度、あるいは次々年度という形で、複数年で取り戻していくという方針です。

 

 

「学校の授業における学習活動の重点化」

「学校の授業における学習活動の重点化」とは、教師が授業で行うべき学習と個人でも行える学習を区別し、学校の授業は教師が授業で行うべき学習に注力させ、時間を有効活用するというものです。

 

個人でも行える学習とは、練習問題やドリルなどで行える学習のことです。ICT(情報通信技術)などを利用し、自宅などでも学習できるようにすることで、学校の授業の効率化を図ります。

 

そして教師と生徒、あるいは生徒同士の関わり合いが重要な学習については、重点的に学校の授業で実施する予定です。

 

子どもの学習の遅れが懸念されますが、このようにさまざまな対策も講じられています。

 

 

受験生への配慮は?

学習の遅れよりも、受験を控えた最終学年の生徒のほうが切実な問題を抱えていることでしょう。

文部科学省では、今回の影響を最も受けやすい総合型選抜(旧AO入試)と、学校推薦型選抜(旧推薦入試)の募集時期を延期させる検討を始めています。

 

通常、総合型選抜は9月以降、学校推薦型選抜は11月以降に出願することとなっていますが、出席日数の少なさや、各競技大会の中止、文化活動が行えなかったことなどが影響し、部活動の実績の評価や調査書において不利益を被る受験生が出てくることが懸念されるためです。

特に、スポーツや文化活動などを頑張ってきた生徒にとって深刻です。各種大会が中止になってしまったことで、春夏の大会で実績をアピールして総合型選抜に臨もうとしていた計画が崩れてしまっています。

 

これらの受験生を救済するために、文部科学省は各大学に配慮してもらう点などを早急に検討し、さらに募集時期をずらすよう大学側との調整が進められています。

 

そして総合型選抜の出願開始については、9月1日から少なくとも2週間は遅らせる方針が固められ、さらなる延期も検討されています。

また、学校推薦型選抜の募集時期や、大学入学共通テスト(旧センター試験)の実施時期についても、後ろ倒しの検討が進められている状況です。

 

 

受験生の不安は解消されるか?

文部科学省と各大学の間でさまざまな対応策が検討されているものの、未だ決定していない事項や、すり合わせ不足な点も多く、受験生の不安が完全に払拭されるまでには至っていません。

受験生が安心して入試に望める環境を整備するためにも、一日も早い対応策の提示が求められます。

 

 

※1出典:「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた学校教育活動等の実施における「学びの保障」の方向性等について(通知)」(文部科学省)

https://www.mext.go.jp/content/20200515-mxt_kouhou01-000004520_5.pdf