「GIGAスクール構想」により加速するICT教育

2019年末に文部科学省が発表した「GIGAスクール構想」は、Society5.0時代に対応した新しいICT教育環境を実現する施策として注目を集めています。

 

今回はGIGAスクール構想の概要をご紹介し、教育現場にもたらされる変化や、教育のあり方がどのように変わっていくかなどについて解説します。

 GIGAスクール構想とは?

GIGAスクール構想の「GIGA」は「Global and Innovation Gateway for All」の略で、グローバル化や技術革新など、変化の激しい時代に対応した新たな教育環境に変革していくという意味が込められています。

 

これまでも学校内のICT化(ネットワーク環境や情報端末の整備)の取り組みは行われてきましたが、予算の関係で整備が進まない、各自治体間での格差があるといった点が問題視されていました。

 

このような状況を踏まえ、文部科学省は「GIGAスクール実現推進本部」を設置。ICT教育の実現に向けて国として継続的に財源を確保し、必要な支援を講じていくことを決めました。

 

GIGAスクール構想の具体的な内容については、次の3つがポイントとして挙げられます。

 

 

ポイント1「大容量の通信ネットワーク」

すでに校内のネットワーク環境を整備している学校であっても、回線速度が遅い、通信できないエリアがあるなど、ネットワーク環境が完備されているとは言い難い状況です。

 

そこでGIGAスクール構想では、令和2年度までにすべての学校において大容量の通信ネットワークを完備することを目標に、国立・公立・私立を問わず希望するすべての小・中・特支・高等学校に対して、校内ネットワークの整備にかかる費用の半分を補助することを決めました。

 

大容量の通信ネットワークが完備されることで、動画やクラウド環境の教材を活用した授業を受けることが可能になるなど、教育の新たな可能性が広がります。

 

 

ポイント2「学習者用端末」

2019年3月時点での学習者用端末の普及状況は、生徒5.4人に対して1台という状況であり、ICT教育が十分に実施できる環境とは言えません。※1

 

GIGAスクール構想では、1人1台のPC端末を実現することを掲げ、当初は令和5年度までに小中全学年での達成を目指すとしていました。現在は新型コロナウイルスの影響を受け、令和2年度中の達成に計画が前倒しされているため注意が必要です。

そのための施策として、通信ネットワークと同様に、すべての学校に1台につき4.5万円を上限に補助金を出すことが謳われています。

 

また学校側が用意するPC端末のスペックや仕様のガイドラインが提示され、現場が混乱しないよう配慮されています。

 

※1出典:「平成30年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」(文部科学省)

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/detail/1420641.htm

 

 

ポイント3「ICTの活用」

GIGAスクール構想では、ハードウェアだけでなくソフトウェア面の整備を明示している点もポイントです。デジタル教科書・教材などのデジタルコンテンツや、AIドリルをはじめとする先端技術など、ICTを活用した学習活動の充実が求められます。

 

さらには、ICT活用養育アドバイザーを全都道府県に配置し、ICTを効果的に活用できる教員を育成するための説明会やワークショップも予定されているなど、ハード・ソフト・指導体制が一体となった取り組みになる模様です。

 

 

GIGAスクール構想で何か変わるか?

GIGAスクール構想が実現されると、日本の教育はどのような変化がもたらされるのでしょうか。

 

まず、遠隔・オンライン教育の実施が可能になるため、学びにおける時間・距離などの制約が無くなり、公平な教育環境が提供されることになります。

 

またICTを駆使して生徒一人ひとりの学習記録を収集・分析することで、個々の生徒の理解度や特性に最適化された教育、適切な支援が可能になるでしょう。

 

そしてプログラミング教育をはじめとするSTEAM学習の環境が完備されれば、学校はSociety5.0の時代を担う人材育成の場という役割を果たしていくと期待できます。

 

GIGAスクール構想によって、これからの日本の教育現場は急速に変化することが予想されます。今後もGIGAスクール構想の動向から目が離せません。