先行きが不透明だからこそ

「将来は安定した職業に就きたい」「我が子を安定した会社に就職させたい」と考えている方は多いことでしょう。

進むグローバル化、AIやロボットの普及による高度情報化、コロナ禍による経済の落ち込み、非正規雇用の増加など、先行きの不透明な状況が続き、今後ますます「安定した職業」の人気は加熱する傾向にあると考えられます。

 

従来の「安定した職業」

1950年代から1970年頃までの高度経済成長期においては、有名大学を卒業し、東証一部上場企業に就職すれば将来安泰と言われる時代が続いていました。この頃は損保会社、総合商社、電機メーカーなどに新卒者の人気が集中していたようです。

 

1980年代半ばから1990年頃までのバブル期では、メガバンクの人気が上昇し、自動車メーカーやゼネコンなども支持を集めていました。

 

1991年頃にバブルが崩壊すると次第に景気が落ち込み、1997年頃には大手金融機関が次々と倒産するという事態に見舞われるなど、2002年頃まで不景気の時代が続きます。

この頃は電機メーカーや自動車メーカーに加え、通信会社も台頭しているのが特徴的です。

 

21世紀に入ると、旅行代理店や航空会社、化粧品メーカー、食品メーカーが人気企業の上位にランクインするようになり、この傾向は現在も続いています。

 

このように見ていくと、トレンドは移り変わっているものの、どの時代もこれからの成長が見込める企業や、経営の安定した大企業に就職したいという新卒者の思いが見て取れます。

 

 

「安定した職業」の条件とは?

では「安定した職業」とは、具体的にどのような条件をクリアした職業なのでしょうか。

一般的には「給与が高く安定している」「リストラがない(終身雇用)」「経営が安定し倒産しない」「景気に事業が左右されない」「福利厚生がしっかりしている」など、収入と将来が安定していることが条件として挙げられることが多いです。

 

 

「安定した職業」の例

安定した職業として、誰しもが思い浮かべるのが「公務員」でしょう。公務員とひとくちに言っても、国家公務員や地方公務員のほか、教員や警察官、消防士、自衛官なども含まれます。

公務員には倒産の心配がなく、リストラもありません。給与も安定しており、福利厚生や退職金も充実しています。

 

社会基盤を支える「インフラ系企業」も安定した職業です。電力やガス、通信、鉄道などの会社は、生活に必要なものなので社会情勢や景気に左右されにくく、待遇も高水準な傾向にあります。

 

また、大手の食品メーカーや損保会社、総合商社も安定感があります。ただしこれらの企業は人気が高く、競争率が高いという点には留意が必要でしょう。

 

 

これからの「安定」とは?

条件を満たしている安定した職業に就けば将来安泰かといえば、必ずしもそうとは限りません。

職業自体が安定していたとしても、やりがいを感じられなかったり、プレッシャーのかかる仕事だったり、職場の人間関係に馴染めなかったりすれば、ストレスを感じてしまうでしょう。

 

仕事に対するモチベーションや人間関係など、さまざまな要素がバランス良く保たれていなければ、本当の意味での「安定」とは言えません。

 

キャリアを磨きたい人、趣味や余暇と仕事のバランスを大事にしたい人など、仕事や人生に対する考え方や価値観は千差万別です。

価値観が多様化し、個性が求められるこれからの時代に大切なのは、世間で言われる「安定した職業」に就くことではなく、自分自身にとって何が「安定」なのかを見極めることではないでしょうか。

 

一生ひとつの会社に務めるのも選択肢ではありますが、スキルを磨いて条件や環境の良い会社を渡り歩いていくというのも、これからの時代に合ったキャリア形成の方法なのかもしれません。

また日本国内に限定せず、海外に活躍の場を見出すこともできます。

 

自分自身の性格や価値観を見つめ直し、世間での評判や経済的な安定ばかりに目を奪われずに、自分にとってベストな働き方やワークバランスについて考えてみましょう。