ビジネスでは一般化しているコーチング

ビジネスシーンや企業の人材育成の場面ではすでに一般化している「コーチング」。

コミュニケーションを通じて目標達成や問題解決へと導く欧米発祥のアプローチ法ですが、近年は教育現場や子育てにおいても有用性が認められ、「子育てコーチング」という言葉を目にする機会が増えています。

 

「子育てコーチング」とは?

コーチングとは、元々1950年代にアメリカで発祥した人材育成手法です。日本に浸透し始めたのは20年ほど前で、主にスポーツやビジネスの世界で利用されてきました。

 

コーチングは、コーチ(コーチングする人)とクライアント(コーチを受ける人)との対話形式で行います。モチベーションを高めたり目標達成への道筋を立てたりして、クライアントの目標達成や自己実現を手助けするのが目的です。

 

この手法を、教育現場や子育てにおいても活用しようというのが「子育てコーチング」です。親が子どものコーチとなることで、子どものやる気を引き出したり、学力を高めるのに活用したりできます。

 

 

「ティーチング」と「コーチング」の違い

コーチングと似ている概念として「ティーチング(教育)」が挙げられます。ティーチングが上から知識や技術を教えることを目的とするのに対し、コーチングは対等な立場でのコミュニケーションによって、本人の内面から答えを導き出すことが目的という違いがあります。

 

些細な違いに感じるかもしれませんが、コーチングでは他人から指示されるのではなく、自ら考え選択するというのがポイントです。なぜなら、人は他人から押し付けられるより、自分で物事を決めた方が高いモチベーションを発揮する傾向があるからです。

またコーチングには、対象者が自発的に考え、能動的に行動する力を養う効果もあります。

 

とはいえ、ティーチングの効果がコーチングに劣るわけではありません。一般的には、対象者の知識や能力の水準が低い場合はティーチングが有効で、一定の知識や能力のある対象者にはコーチングが向くとされています。

 

 

子育てコーチングの基本は「子どもの話をよく聞く」こと

子育てコーチングでは対等な立場でコミュニケーションを行い、相手の考えを深め、自ら答えを出せるよう導いていきます。そのためには、子どもの話に意識を集中し、気持ちに寄り添い、子どもを一人の個人として尊重するという心構えが不可欠です。

 

子どもの話を聞き流したり、バカにしたり、途中で口を挟んだりしてしまうと、子どもは「ちゃんと話を聞いてくれないから、話しても無駄だ」と感じてしまいます。

 

次に大事になるのは質問の仕方です。「なぜそう思うの?」「どうしたいの?」「どうしてそうしたいの?」といった、オープン・クエスチョンをするようにしましょう。

オープン・クエスチョンとは「はい/いいえ」で答えられない質問のことです。反対に「はい/いいえ」で答えられる質問は、クローズド・クエスチョンといいます。

 

矢継ぎ早に質問を繰り返すと「質問責め」と感じてしまうので、一つひとつの問答を大事に、じっくり時間をかけて対話するようにしましょう。

 

 

子育てコーチングで得られる効果

子育てコーチングで子どもの話に耳を傾けると、子どもは「自分を受け入れてくれた」という安心感と自己肯定感が高まります。

 

子どもは他人から押し付けられることに対して反発心を覚えるものですが、子育てコーチングによって自ら考え導き出したことなら、やる気を発揮しやすくなります。これにより、学習のモチベーションが上がり、自発的に考える力や能動的に行動する習慣が身につきます。

 

受験においても子育てコーチングは有効です。不安やストレスを感じやすい受験シーズンに子育てコーチングを行い、不安な気持ちを吐き出させ、共感してあげるだけでも、子どもの安心感につながります。

目標に向かってやるべきことを指示するのではなく、どうしたらよいかを親子で対話しながら、自ら気づかせるように導いてあげましょう。

 

 

子育てコーチングは親子関係を良好に

「子育てコーチング」と聞くと難しそうに思われるかもしれませんが、何も特別なことではありません。子どもの話を真剣に聞き、気持ちに寄り添い、質問して子どもに考えさせるという対話が、コーチングの基本です。親子関係を良好に保つコミュニケーション法と言い換えることもできます。

 

「最近親子のコミュニケーションがうまくいっていない」と感じている方にも有効な方法なので、試してみてはいかがでしょうか。