先行きが不透明な現代日本

情報技術革新で拍車がかかるグローバル化や雇用の流動化、そして超高齢化社会と、現代日本を取り巻く状況は複雑で、先行きが不透明な状況になっています。

また、子ども達が将来に向けて、希望あふれる夢を描くことが困難な状況にあるという指摘もされています。

このような社会的背景を踏まえて、教育業界で注目を集めているのが「キャリア教育」です。

 

「キャリア教育」とは何か?

文部科学省はキャリア教育を、「一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育」と定義しています。

また、キャリアの形成にとっては「自らの力で生き方を選択していくことができるよう必要な能力や態度を身に付けること」が重要だとしています。

 

ここでいう「キャリア」とは、単に職業を通じて積み重ねていく経験や実績にとどまりません。「人が、生涯の中でさまざまな役割を果たす過程で、自らの役割の価値や自分と役割との関係を見いだしていく積み重ね」がキャリアの意味とされています。

つまり、社会の中で「自分らしい生き方」を実現していく過程こそがキャリアの発達であるといえるでしょう。※1

 

※1出典:「高等学校キャリア教育の手引き」より引用

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/career/1312816.htm

 

 

「キャリア教育」が必要となった背景

キャリア教育が提唱された背景には、高度情報化やグローバル化、少子高齢化などの社会情勢の変容に加えて、社会の変化に教育が追いついていないという問題があります。

 

これまでの学校教育は知識の詰め込みが重視され、「生きること」や「働くこと」といったキャリア形成につながるテーマは、十分な取り組みがなされていませんでした。

 

この反省点を踏まえて行われたのが、教育基本法や学校教育法の改定です。具体的には、生活に必要な衣・食・住、情報、産業などの基礎的な理解と技能を養うこと、職業の基礎的な知識と技能や、勤労を重んずる態度、個性に応じて進路を選択する能力を養うことなどが、改定によって盛り込まれています。

 

 

「キャリア教育」の具体的施策

これらの目標や方針を実現していくために、学校では具体的にどのような教育が行われるのでしょうか。

実は、小中高すべての学校の約9割でキャリア教育の担当者が配置され、すでにキャリア教育が始まっています。

 

小学校のキャリア教育としては、学校で働く人にインタビューを行ったり、さまざまな職業や産業が社会の中でどのような役割を果たしているか考えたりする授業が行われています。

 

中学校では、自身の進路について考える授業や、自分の個性を社会にどう適応させるか考える授業、職場体験などが実施されています。

 

これらのキャリア教育に関わる授業は、道徳や学級活動、総合的な学習の時間、各教科の中に盛り込まれているのが一般的です。

 

 

「キャリア教育」の効果

キャリア教育を推進していく中で、小中高に関係なく、生徒達の学習意欲が向上したとの報告があります。

キャリア教育の充実度が高い学校ほど、生徒の学習意欲が向上したというデータもあり、キャリア教育と学習意欲向上には相関性が見られます。

 

人は夢や目標、将来のビジョンがないと、主体的・積極的に動かなくなるものです。反対に、夢や目標を持つことができれば、自主的に努力しようとする意欲が湧いてきます。

キャリア教育を通じて、就職や進学といった将来の進路に対する具体的なイメージが湧けば、夢の実現に向けて努力をするきっかけになるのではないでしょうか。

 

キャリア教育はまだ始まったばかりの施策です。その効果も十分に出ているとは言い難いかもしれませんが、変化の兆しは見えています。キャリア教育の今後の動向に、注視していく必要があるといえるでしょう。