教育業界のトレンド

最近「アクティブ・ラーニング」という用語を耳にする機会が増えています。

教育業界に携わる方や教育動向に関心のある方であれば、その意味を理解しているかもしれません。しかし、「具体的にどんなものか詳しく知らない」という方も少なくないはずです。

 

教育業界のトレンドとなっている「アクティブ・ラーニング」ですが、なぜ今注目されているのでしょうか。

 

アクティブ・ラーニングとは

アクティブ・ラーニングとは、「能動的学修」と呼ばれるものです。文部科学省は「教員による一方向的な講義形式の教育とは異なり、学修者の能動的な学修への参加を取り入れた教授・学習法の総称」と表現しています。

また、「学修者が能動的に学修することによって、認知的、倫理的、社会的 能力、教養、知識、経験を含めた汎用的能力の育成を図る」ともしています。※1

 

「学習」ではなく、あえて「学修」という書き方をしているところにも、文部科学省の意図が垣間見ることができるでしょう。

 

アクティブ・ラーニングを進める具体的な方法としては、発見学習や問題解決学習、体験学習、調査学習に加え、教室内でのグループディスカッション、ディベート、グループワークなどが挙げられています。

 

※1 文部科学省:「教育課程企画特別部会 論点整理 補足資料(5)」より引用

https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/09/24/1361110_2_5.pdf

 

 

アクティブ・ラーニング導入の背景

アクティブ・ラーニングの必要性が叫ばれるようになった背景には、急速に進むグローバル化や少子高齢化、その他社会問題といった、環境や構造の変化があるとされています。端的にいえば、かつて「モノづくり大国」と謳われた日本が、近年は国際競争力が低下していることへの危機感の表れといえるでしょう。

 

他国をリードするテクノロジーを生み出せる国にするには、次世代を担う若い世代の育成、つまり教育改革が急務です。

 

重化学工業を主にした高度経済成長期は、作業の正確さや効率化などが重視され、人材育成においても画一的な「知識詰め込み教育」で事足りてきました。

しかし、AIやロボットといった先端技術の発達をはじめ、急速に変化を続けるこれからの時代に、重要視されるのは知識の詰め込みではありません。未知の状況にも対応できる思考力や判断力、表現力といった能力が、生きるうえで必要不可欠といえるでしょう。

 

 

アクティブ・ラーニングの現状

アクティブ・ラーニングは、すでに教育現場で導入が進められています。

小学校は2020年度から、中学校では2021年度からスタートした新学習指導要領にも「主体的・対話的で深い学び」という言葉で、アクティブ・ラーニングが表現されています。

 

教員による授業の進め方に見直しが図られていたり、対話的学習やグループディスカッション、グループワークが取り入れられたりと、教育現場でも少しずつ授業のあり方が変化しているのです。

 

 

家庭でもできるアクティブ・ラーニング

アクティブ・ラーニングと聞くと、何やら難しそうだと思われるかもしれませんが、家庭でもアクティブ・ラーニングは実践できます。

 

例えば、子どもから質問された際は、答えを教えるだけではなく、「思考を促す声かけ」をしてみましょう。

「あなたはどう思う?」「なぜそう思った?」「どうしてこうなると思う?」「こっちはどう?」といった声かけで、学びは一気に深まります。

 

他には「〇〇なのはどっち?」「あなたの考えは?」といった「判断を促す声かけ」や、「絵に書いて説明して」「体で表現して」などの「表現を促す声かけ」、「何が悪いと思う?」「どうすれば解決できる?」などの「問題解決を促す声かけ」を繰り返すのも有効です。思考力や判断力、表現力が強化され、主体的に物事を考える癖をつけられます。

 

そして、アクティブ・ラーニングの中でも学習定着率の高い方法として知られているのが「他人に教える」ことです。これを家庭内学習で使わない手はありません。

ある問題に対して、自分では理解したつもりでも、いざ他人に教えるとなると上手に説明できず、根本を理解していなかったと気付かされることがあります。このようなプロセスを経ることが、アクティブ・ラーニングでは重要です。

 

子どもが問題を解いたら「この問題の解き方教えて」「ここはどうしてこうなっているの?」などと質問して、子どもに教えてもらいましょう。子どもの理解度がさらに深まるはずです。