社会情勢に合わせた変更が目立つ

大学という教育機関は、さまざまな分野の研究を行って学問を発展させるのと同時に、産業界のニーズに基づき、次世代を牽引する人材を養成する役割も担っています。

 

したがって、大学の学部や学科は不変ではありません。時代や社会情勢に合わせて、少しずつ変遷を繰り返しているのです。

2022年度も、多くの大学で学部や学科の新設・再編が予定されていますが、これは現在の社会情勢を反映した結果といえるでしょう。

 

傾向その1「情報系」

近年の大学の傾向として特に目立つのが、第4次産業革命に突入しつつある現代社会の要請に対応するための「情報系」学部・学科の新設です。

 

第4次産業革命とは、第1次(蒸気機関などによる工業化)、第2次(電力による大量生産)、第3次(電子工学や情報技術)に次ぐ、ロボット工学やAI、ビッグデータなどのデジタル技術を用いた新しい技術革新のことです。

 

情報系エンジニアの中でも、特に人材が不足しているとされる「データサイエンティスト」の育成を目指す学科の新設が多いです。情報学部や情報工学科、データサイエンス学科といった情報系学部・学科の新設が目立ち、人気の高さが窺えます。

また、理工学部の配下にあった情報学科が情報学部に格上げされる再編も見られます。

 

 

傾向その2「理系学部の再編」

2つ目の大きな流れとして、理系学部の再編が挙げられます。

産業界の変化に合わせて、よりニーズの高い分野へのシフトや、専門性の高い教育を行うための細分化が、多くの大学でなされている状況です。

 

九州大学工学部では、建築学科や機械航空工学科などの6学科が、2021年度より12学科に細分化されています。関西学院大学では、理工学部を理学部・工学部・生命環境学部・建築学部の4学部体制にする大幅な改革が行われました。

 

今後もさまざまな大学で、理系学部の再編や学部・学科の新設が行われる傾向は続くと思われます。

 

 

傾向その3「国際・観光系」

新型コロナウイルスの影響で、インバウンドを中心とした日本の観光業は大打撃を受けましたが、世界的なグローバル化の流れの中で、国際関係や観光系の学部・学科は依然として注目度が高い傾向にあります。

 

國學院大学では、2022年度より「観光まちづくり学部」が新設される予定です。地域の環境・社会・経済に関する幅広い知識をベースに、持続可能な「観光まちづくり」を実践できる人材育成を目指すとしています。

 

また、大阪成蹊大学では国際観光ビジネス学科が国際観光学部に昇格し、武蔵大学では国際教養学部が新設されるなど、グローバルな舞台で通用する人材育成を目指す動きが見られます。

 

 

大阪公立大学が新設

2022年度より、大阪市立大学と大阪府立大学を母体とした新大学「大阪公立大学」がスタートします。学生数は約1万6千人で、全国最大規模の総合大学となる見込みです。

 

初年度に募集する学部は現代システム科学域、文学部、法学部、経済学部、商学部、理学部、工学部、農学部、獣医学部、医学部、看護学部、生活科学部となっています。

 

また、大阪公立大学では国際人材の育成に力を入れているのも特徴です。300を超える海外交流協定校との交換留学や交流プログラム、国際交流会館での異文化交流などを通じて、語学力の強化や国際的視野を養う教育が用意されています。

 

その他、公立では川崎市立看護大学(川崎市立看護短期大学より移行)、私立では大阪親愛学院大学(大阪親愛学院短期大学は募集停止)と令和健康科学大学が、2022年に新設される予定です。

 

 

時代の潮流を先読みした大学選びを

大学や学部・学科選びは、その後の就職や進路に大きな影響を与える大事な選択です。

コロナ禍で先行き不透明な状況が続いていますが、アフターコロナの世界を予測し、先を見越して志望校を選択することも大切です。

 

さまざまな大学の情報を積極的に収集し、偏差値や知名度だけにとらわれず、自分に合った志望校選びをするようにしましょう。