学校では教えてくれない「お金」のこと

以前から、日本人は海外と比較して金融リテラシー(金融に関する理解や活用する力)が低いといわれています。原因のひとつに挙げられるのが、金融教育が不足している点です。

日本では「お金の話をするのは、はしたないこと」「お金儲けは良くないこと」といった認識が依然として残っていて、家庭内でも子どもとお金の話をすることはタブー視されている傾向にあります。

 

学校教育では、社会科や政治・経済などの授業で、お金をテーマに扱うこともあります。しかし、内容は極めて限定的で、実践的な内容とは言い難いのが現状です。

 

 

なぜ「お金の教育」が必要か?

そもそも、「なぜ子どもに対してお金の教育が必要なのか?」と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれません。

自分が子どもの頃、親や学校からお金について教わった経験が一切なく、社会に出てから自然と覚えるものだという認識もあるはずです。しかし、それで十分といえるでしょうか?

 

貯蓄・投資の利回りやリスク、保険や証券といった金融商品のメリット・デメリット、通貨や為替の仕組み、インフレ・デフレの原因など、基礎的な金融の知識でも、きちんと説明できる人はそう多くないと思われます。誰しも、「勉強しておきたかった」と感じたことがあるのではないでしょうか。

 

金融教育は、現代社会を生きるうえで極めて重要です。金融教育をしっかり受けていれば、リボ払いによる無理な買い物や、金融詐欺の被害などの危険を回避し、大切な資産を守ることにつながります。資産を適切に運用することで、安定的な人生を送る助けにもなるでしょう。

 

 

海外の金融教育

日本の金融教育がいかに遅れているかを理解するには、海外の金融教育事情を知るのが一番です。

 

アメリカではパーソナルファイナンス、つまり個人の資産を最適化するための教育が重要視されています。

貯蓄と資産運用ではどちらが有利か、どんなリスクがあるかといった知識を学び、自分のライフプランに沿った金融戦略を考えられるような教育が行われています。

 

イギリスでは、公立学校のカリキュラムに金融教育が必修科目として取り入れられています。小学校の段階で金融や経済、お金と社会の関連性などについて学びます。

 

またフランスでは、銀行口座や投資に関する教育に加え、ビットコインなどの仮想通貨に関する授業も行われているようです。

 

 

家庭でできる金融教育

金融教育と聞くと難しく感じますが、家庭内でも十分行えます。

例えば、幼い頃から貯金箱を与えてみるのも、立派な金融教育です。貯金箱にお金を少しずつ入れていき、1年後にはたくさんお金が溜まっていたという経験をさせるだけでも、貯蓄の大切さについて学ぶことができます。

 

また、値段と量の異なる2つのお菓子を比較して、どちらがお得かを話し合うなど、家庭内で気軽にお金の話をすることをおすすめします。

「モノポリー」や「人生ゲーム」といったボードゲームを使って、貯蓄や投資について楽しく学ぶのも良いでしょう。

 

金融庁や国税庁、日本銀行のホームページでは、基本的な金融に関することを学べるコンテンツを発表しています。子どもが興味を示しやすいゲームや漫画といった形式で、お金の流れや価値、税金の仕組みなどを学べます。

他にも、子ども向け金融教育の教材やアプリはたくさんあるので、探してみてはいかがでしょうか。

 

 

今後の金融教育の動向は?

2022年度からスタートする高校の新学習指導要領では、「金融商品による資産形成」という視点を授業に盛り込むことが求められています。

しかし、金融教育として独立した教科ができるわけではなく、さまざまな教科に組み込まれる形にとどまり、明確な内容は規定されていません。

 

とはいえ、日本の金融教育に変化の兆しが見えているのも事実です。今後の動向に期待しつつ注目していきましょう。